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薬膳


1)歴史と背景

 古代より中国では毎日の食事が心身の健康状態に大きく影響すると考えられてきた。薬膳ということばそのものが使われるようになったのは1980年ごろのことだが、食事によって病気の治療や健康維持を図る営みは古代中国においてすでに定着していた。このような医療活動や生活習慣が、広い意味での薬膳である。

 中国の周の時代(紀元前1046年ごろ〜256年)に書かれた古典『周礼』に「食医」ということばが出てくる。食医は皇帝の食事を管理して皇帝の健康管理と病気の治療を行なっていた医師である。当時、医師には食医、疾医(内科)、傷医(外科)、獣医の四種類があり、食医はその中の最高位であった。

 紀元前四世紀ごろから記された医書『黄帝内経』では「未病を治す」と予防医学の重要性が示され、食事による健康管理の必要性も説かれている。薬膳のなかでも、病気にならないように健康維持をすることを「食養」、また病気の治療に食事を工夫することを「食療」という。食べものの力を利用して未病を治し病気を防ぐために、薬膳は古くから重要な役割を果たしてきた。

2)現在の薬膳

 薬膳が皇帝のためのものであった古代とはちがい、現在の中国では薬膳は広く大衆に浸透している。家庭の主婦は家族の体調や気候に合わせて食材を選び献立を考える。市場に行けば漢方生薬は容易に入手できる。

 医療現場でも薬膳は重要な医療のひとつである。現在中国では西洋医学と中医学がともに認められており、薬膳は中医学の一分野として存在し、教授を筆頭に多数の教員が治療・研究・教育に携わっている。

 具体的には、手術前の体力強化、術後の体力回復をはじめ、化学療法や放射線療法を薬膳と併用してその副作用を軽減させるなど、西洋医学との協力で治療効果を高めている。また糖尿病や貧血、高血圧、ぜんそく、婦人科系の疾患をはじめ多くの慢性疾患において、漢方薬とともに薬膳による改善が活用されている。




1)現代栄養学との比較

 西洋医学には事象を細分化してとらえようとする機械論的自然観が根底にある。一方、東洋医学は部分よりも全体の相関関係を重視する有機的な価値観に立脚している。この視点の違いが現代栄養学と薬膳との相違にも現れている。

 栄養学は食品を分析して炭水化物やビタミンといった栄養素を発見した。一日に必要なたんぱく質は何グラムだから、この食品をこれだけ摂取するといい、という形である。

 一方、薬膳では人体に与える食品の影響力を明確にしてきた。からだを冷やすとか温めるとか、あるいは肝臓にいいとか呼吸器系にいいとかである。これらの特徴を食生活に生かして病気の予防や改善に役立てようというのが薬膳である。たとえば冷え症の人は、冷たい生野菜よりも温かい根菜の煮物のようなかたちで野菜をとる、それだけでも立派な薬膳の考え方といえる。

 ひとつの例として、たとえば骨を強くしたい場合、栄養学ではカルシウムの補給をすすめる。骨の主成分がカルシウムだからである。一方、薬膳では、骨の生成と関係が深い機能を高める献立を作る。カルシウムの摂取量を増やすのも大事だが、食べたものに含まれるカルシウムが骨としてしっかり身につく力を高めるのが薬膳である。

 なお薬膳には必ずしも漢方生薬を使う必要はない。先の例のように冷え症の人に身体を温める料理を供するだけでも立派な薬膳である。薬膳料理と薬草料理とはちがう。

2)「気」の摂取

 漢方において重要な概念に「気」がある。気とは、生きるために必要な生命力やエネルギーのことである。各種生命活動や生理機能を推進する構成成分として漢方や薬膳で重要視されている。

 薬膳では食品を栄養素の集合体としてとらえるのではなく、食品に含まれる「気」を食事をとおしていただくものと考える。食材が自然界で生長するあいだに得た大地や海、太陽エネルギーを、食事としていただくということである。

3)サプリメントと薬膳

 サプリメントは一般に栄養補助食品のことをさす。不足している栄養を錠剤や飲料のかたちで補給する。

 一方、薬膳は、足りない栄養を補うだけでなく、落ちた機能を活性化したり、流れのわるいものの流れを改善したり、からだに過剰に存在するものを除去したりということも行う。体質にあった食事をとることにより、心身を養い、免疫力を高め、病気になる前に病気の芽をつんでしまうのが薬膳である。

 近年増加傾向にある糖尿病や高脂血症、がん、高血圧などの生活習慣病、あるいはアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患、それにアレルギー性の疾患などは、漢方で考える流れの悪化や過剰物の存在と関係が深い。今後は流れや過剰物の鬱滞を改善する薬膳の役割が高まると思われる。




1)医食同源

 医薬も食品も、ともに生命を養い健康を保つためのものであり、その本質は同じである。これを医食同源という。毎日、口にするものがそのまま血となり肉となり、からだをつくり、生命力となる。

 漢方の場合、薬つまり漢方薬の原料はすべて天然のものである。薬も食べものも、ともに自然のなかではぐくまれ、生長してきた。根や実、葉などに大地、海洋、太陽からのエネルギーや物質、つまり「気」が凝集されている。その大自然の恵みをいただいて日々の糧とするのが「食」、病気を改善するのが「医」である。毎日の食事にじゅうぶん配慮していれば健康を維持できるというのが医食同源である。

2)五味五色

 中国では古代より万物を五つに分けて考える哲学、五行説が浸透していた。その考えにもとづき、食べものも五つに分類された。五味とは酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(塩味)であり、五色は青、赤、黄、白、黒である。それぞれが五臓という機能大別に対応する。この五つを摂取すると体内の諸機能が潤滑に働く。未病や病気のときは、弱っている機能を高めるものを食べる。

3)身土不二

 身は人間のからだ、土は環境を意味する。身土不二とは、健康状態と環境とは切っても切れない関係にあるということである。たとえば寒い地域と暑い地域とでは、育つ植物がちがい、人が口にする食べものも異なる。暑い地域で食べられる食材にはからだを冷やすものが多い。寒い地域の人が暑いところでとれた特産物ばかり食べていると、からだが冷えてしまう。

4)一物全食

 食材をまるごと全部食べることを一物全食という。植物は根がなくても葉がなくても育たない。植物のすべての部分は、なにがしかの重要な役割を果たしており、その結果、その植物が生長できる。そのすべてをいただこうというのが一物全食である。動物も同じである。ふだん捨てている野菜の皮や根、また魚の内臓にも、栄養がたくさん含まれている。

5)食性

 食べものには、そこに含まれる滋養分という角度以外に、それを食べることにより身体が温まるか、冷えるかという角度もある。
それを食性という。熱、温、平、涼、寒の五つがあり、体調や環境によって食材を選ぶ目安にする。




 飽食の時代といわれるようになって久しい現在、とくに意識しないでいると必要以上の動物性の食品が体内に入ってくる。動物性のたんぱく質や脂肪が必要な場合もあるが、過剰な肉食では弊害が生じる。白砂糖のとりすぎや、農薬、それに着色料や防腐剤をはじめとする食品添加物も「気」を消耗させて臓腑のバランスを失調させる一因となる。

 毎日の食事は、単に空腹感を充足させるためのものではない。好きなものばかり食べる偏食を続けていては体質の悪化を招く。

 食事は、自然界の「気」を取り入れて健康を維持し、病気を改善する営みである。体質や体調、生活環境に合わせて食事が組み立てられれば健全な体質を維持できる。未病を癒すためにも薬膳の知恵を活用することが望まれる。

なお、以下のエッセイ・ショートストーリーも参考になさって下さいませ。

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