薬石花房 幸福薬局


柴胡 (さいこ)
セリ科の多年草ホソバミシマサイコBupleurum scorzoneraefolium の根。
肝の気の流れを調整します。解熱、抗炎症、抗潰瘍、肝機能改善作用があります。
一般に6〜18グラムを煎じて服用します。





自律神経の安定に

 一年前に東京の有名フランス料理店の店長に抜擢された49歳の男性は、着任当初から店長としての仕事の重みをストレスに感じていた。それでも仕事を続けたが、とうとう体調を崩してしまい、しばらく休養することになった。店長への復帰が危ぶまれていた。

 彼は若いころからずっと同じ店でウェーターをしてきた。勉強熱心でどんどん料理やワインの知識が豊富になり、軽い冗談を織り交ぜながら話す、温和な彼のファンとなる客は多かった。

 そんな人望の厚さと責任感の強さが買われて、店長になった。

 しかし店長の仕事は、彼にとって重荷であった。営業成績について毎日、責任を問われた。そして、オーナーとスタッフの板挟み。それでもがんばった。しかし、次第に表情が硬くなっていった。

 最初のうちは、憂鬱感に捉われて塞ぎ込むことが多かった。そのうち情緒不安定になり、ちょっとしたことでヒステリックな反応をしたり、そうかと思えば無口になったりした。一人で溜め息をつくことも多くなった。

 そして半年後には、客の前で緊張して口が回らなくなったり、手が震えたりするようになった。とてもじゃないが店に出られる状態ではなくなった。病院で自律神経失調症と診断された。

 精神的な緊張や過度の環境変化が原因で、「気」の流れが欝滞することがある。そうなると、この男性のような症状が出やすい。漢方では、これを「肝気欝結」と呼んでいる。「肝」は五臓の一つで、疏泄を司どるところであるが、ここがストレスで失調した状態だ。西洋医学の自律神経系や大脳辺縁系と似ている。

 この状態を打開する生薬の一つが柴胡。ミシマサイコの根を用いる。柴胡は「疏肝解欝」の力が強い。ほかに解熱作用や肝機能改善作用もある。

 先の彼は、柴胡の入った漢方を三ヶ月飲み、社会復帰を果たした。もちろん、家族の協力と職場の理解も欠かせなかった。
エルネオス 2006年11月

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