薬石花房 幸福薬局


炮附子 (ほうぶし)
キンポウゲ科の多年草カラトリカブトAconitum carmichaeli の側根。
体を温める強い作用があります。強心作用・鎮痛作用もあります。
一般に1.5〜5グラムを煎じて服用します。





加齢による衰えや冷えに

 家具制作会社で会長を務める七十歳の男性は、最近やたらと「老い」を感じるようになった。若いころから重いものを運んだり寒い仕事場で長時間働いたりしていたせいもあるだろうが、腰痛や膝の痛みがある。痛いだけでは老いを感じるには至らないが、近ごろでは常に下半身がだるく、力が入らないのが情けない。

 寒がりにもなった。とくに下半身が冷える。下腹が冷えるせいか、トイレが近く、尿の量も多い。便も常に軟便であり、昔のようにバナナ状の元気な便には最近お会いしたことがない。

 体が冷えるので厚着をして、じっと座って温かい湯飲みを抱えていると気持ちがいい。座骨神経痛による足の痛みやしびれも、温めると楽になる。しかし女房からは年寄りくさいといやがられる。

 この男性のように、加齢などに伴って全身の機能が衰えてエネルギー代謝が低下している状態を「陽虚」という。陰陽盛んな青壮年期と比べて、体を温めたり生理機能を活発に進めたりする陽の力が衰えた状態である。漢方では、この陽虚体質の人に対して「補陽」という方法で対処していく。漢方薬で陽を補うわけである。「附子」はこの補陽作用が強い生薬のひとつ。カラトリカブトなどの側根を用いる。

 トリカブト属は古くから毒草として世界的に知られており、アイヌ民族は狩りの際の矢毒に使っていた。毒の成分はアコニチンというアルカロイド。生のまま服用すると、口や舌のしびれ、嘔吐、よだれ、めまい、発汗などの中毒症状を起こす。

 漢方では、この毒草を生薬として用いている。一般に熱を加えるなど減毒した「炮附子」を用いる。毒性はきわめて少ない。

 陽虚がすすみ、体がますます冷え、呼吸が衰え、脈が弱くなり、冷や汗が流れ出るような重症を「亡陽」といい、附子はこの状態にも使われてきた。現在ではそうなる前に体質強化の目的で使われることが専らである。ハサミ同様に、使いようによっては危険なものでも上手に使うと役に立つ。

 先の男性も附子配合の漢方で体の中から自らを温める力を回復し元気を取り戻した。

エルネオス 2008年1月

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