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説明・解説
花粉症は、いまや日本に2000万人の患者がいるという、わが国を代表するアレルギーの病気です。私も以前は花粉症でしたが、漢方薬の服用により、すっかり花粉症の体質が改善され、それ以降は何年もずっと花粉症に悩まされることなく、もちろん花粉症の薬を使うこともなく、暮らしています。

まずは花粉症の症例などをお話しし、続いて花粉症の漢方薬について説明していきます。

毎年2月から4月にかけてはスギ花粉が猛威をふるい、そのあとはヒノキ、カモガヤやオオアワガエリ、秋にはブタクサやヨモギなどの花粉も飛散しています。北海道ではスギ花粉は少ないのですが、シラカンバの花粉が花粉症を引き起こすようです。

35歳の男性の例です。2年前から急に花粉症になりました。仕事中でも水のような鼻水が流れ出ます。会議中にくしゃみが続けて出たりもします。鼻水はいつも突然出始めるので、気が気ではありません。頭が重く、集中力に欠け、憂うつな日々が続きます。
ティッシュペーパーが手ばなせず、鼻のまわりは赤くかさかさです。大事な会議の前などは市販の鼻炎薬で症状を抑えますが、眠気がするし頭がぼうっとするし、鼻の奥やのどが乾いて不快です。

漢方では、花粉症は、体内にある余分な水分が花粉の刺激によってあふれ出し、鼻水、くしゃみ、涙、鼻粘膜のむくみとして現れてきている現象ととらえます。漢方で見立てる体質のひとつに、体内に冷たい水分が過剰に存在する体質というのがありますが、そういう体質の人は花粉症になりやすいのです。花粉症に悩む人は、そういう体質を漢方薬で改善していけばいいのです。

たとえば胸のあたりに浴槽があるとイメージしてください。浴槽になみなみと張られた水が、余分な水分です。もし水を入れすぎると、あるいは浴槽のサイズが小さいと、水が浴槽からあふれ出し、鼻みずやくしゃみとなります。

水の量が浴槽に比べて少ないときには多少その水の量が増えても鼻水が出る結果にはなりませんが、水面が浴槽のふちを越えると突然、鼻水が出ます。ある年から急に花粉症になる人が多いのは、このためです。

花粉症になりやすいのは、この体内の浴槽に水がたまりやすいか、あるいは浴槽のサイズが小さい人です。具体的には、清涼飲料や冷たい飲み物が好きな人、くだものが好きな人、お酒ならビール党、甘いもの好き、冷え症、胃腸の弱い人、下痢しやすい人などが、このタイプです。

ということは、日常生活では水分や甘いものをとりすぎないようにし、体を冷やさないように注意すればいいわけですね。冷たい清涼飲料よりは温かいお茶、くだものや生野菜よりは温野菜です。花粉症の症状が出ない時期にも気をゆるめずに、たとえば夏でも鼻水が出ないからと安心しないで水分やビールをがぶがぶ飲むのは少し控えたほうがいいでしょう。

近年の花粉症患者の急激な増加に対し、スギ花粉が悪者のように扱われますが、スギ花粉は太古からこの時期に飛散していたわけですし、問題はむしろ私たち人間の体質の変化にもあると漢方では考えます。戦後の植林の影響でスギ花粉の飛散量が増加しているようですが、スギの植林地から都会に出てきて初めて花粉症になる人も多くいます。スギ花粉は、いわば引き金ということになりますね。

さて前述の35歳の男性の場合ですが、彼には体内の余分な水分を排泄する働きのある半夏や路路通などの漢方生薬に、体を温めて浴槽を大きくするための乾姜や白芍などの生薬を一緒に煎じて服用してもらいました。ついでに私の場合は、手足が冷えやすく、また胃腸も弱いほうでしたので、茯苓や炮附子などの生薬を服用して、半年ほどで体質改善できました。それ以降は花粉症のために漢方薬を飲むことがなくなりました。

私のところでの花粉症に対する漢方薬の有効性をまとめた論文が2002年に北京で開かれた国際学会「世界養生大会」で認められ、発表する機会がありました。「花粉症に対する健脾利湿法の有効性」という論文です。内容は、体内に余分な水分がたまっているタイプの花粉症に対し、余剰水分の排泄と胃腸機能の改善のための漢方薬を服用し、同時に上記のような養生を行った結果、満足のいく効果が得られたというものです。漢方薬の服用と並行して、水分や甘いもののとりすぎに注意することは、かなり有効ですよ。

最後に常識的なことですが、日常生活においては水分や甘いもの、冷たいものをとりすぎないこと以外に、体質が改善されるまでは花粉症の引き金となる花粉との接触を避けることも必要でしょう。花粉情報に注意して窓を閉めたり、外出時はマスクや眼鏡で花粉の侵入を防いだり、帰宅後はうがいや洗顔をしたり、洗濯物を屋外に干したときは十分はたいてから室内に取り入れたりと、自分を守るための細かい配慮を心がけてください。

なおここでは水分が体内にたまりやすいタイプの花粉症を中心にお話ししましたが、花粉症にはこれ以外にもさまざまなタイプがあります。漢方で花粉症の根本的な治療をしようという人は、必ず漢方の専門家のカウンセリングを受けて、自分がどういうタイプかをみてもらってから漢方薬を選んでください。
西洋医学では
アレルギー反応が起こる局所的なメカニズムですが、まず花粉が鼻粘膜に付着したあと花粉のたんぱく質が粘液に溶けて鼻粘膜内に入ります。そこで鼻粘膜内にあるマスト細胞の細胞膜についているIgE抗体と反応し、その結果マスト細胞内に蓄えられていたヒスタミンが遊離されてアレルギー症状が誘発されることがわかっています。そのヒスタミンが鼻粘膜の粘液腺を刺激するので鼻水が出ます。また毛細血管を広げるために血管から水分が漏れ出て鼻粘膜が腫れて鼻がつまります。そして神経を刺激するのでかゆみが生じます。

西洋医学では、この局所反応を抑制することにより、アレルギー症状の緩和を図ります。代表的な処方は抗ヒスタミン剤です。ヒスタミンの遊離が抑えられるので症状が緩和されます。花粉が飛び始める数週間前から服用すると症状をよく抑えられるようです。
またクロモリン(インタール)の点眼液や点鼻液も、症状を抑えるためによく用いられます。炎症を強力に抑える作用のあるステロイド剤も使われます。

これらは、いずれも症状を抑える薬です。ですから皆さん経験されているとおり、薬を飲み忘れると必ず症状が再発します。また抗ヒスタミン剤には眠気、口の渇き、疲労感や体のだるさなどの副作用があります。また飲み続けると、だんだん効かなくなる傾向があります。ステロイド剤も、抗炎症作用が強いぶん副作用も大きいので注意してください。

減感作療法という治療法もあります。スギならスギ花粉エキスを薄めて注射して体内の抗体を増やしていくという原理です。はじめは毎週2から3回病院に通って注射を受け、これを約3年間続けます。この療法も、人工的に抗体を作っているわけですから、治療をやめると徐々にアレルギーが現れるようになります。また強い副作用の可能性や、注射液の濃度の微妙の調整が必要がありますので、これを行う場合は十分信頼できる病院で行うようにしてください。

西洋医学にも漢方にも、長所と短所があります。そのあたりを、薬を飲む本人がよく理解して使ってほしいと思います。
おもな漢方薬
 
花粉症には、その人の体質により、さまざまな漢方薬が使われます。おもな漢方薬は以下のとおりです。

主な症状など 漢方薬
鼻水がたらたらと流れる 苓桂朮甘湯、真武湯、など
鼻づまりがひどい 蒼耳散、越婢湯、など
くしゃみを連発する 四逆散、逍遥散、など
目がかゆい、目に違和感 桂麻各半湯、白虎湯、など
皮膚が乾燥してカサカサ 黄連阿膠湯、四物湯、など
頭が重い 独活湯、当帰四逆湯、など
微熱、熱っぽい 保陰煎、挙元煎、など
顔などが、むくむ 防已茯苓湯、甲字湯、など
吐き気、下痢など胃腸の不調 参苓白朮散、黄耆建中湯、など
だるい 補中益気湯、牛膝散、など
咳が出る 麦門冬湯、五虎湯、など

(複数の症状が当てはまる場合は、漢方薬もまた別のものになります)

なお、よく漢方薬として小青竜湯という処方が出されるようですが、この薬は体質改善ではなく、むしろ症状を抑える薬です。患者のアレルギー体質を改善したいと考える場合、この薬を処方することはほとんどありません。ご参考までに、患者の症状や生活習慣などに対する問診をしないで小青竜湯エキス顆粒ばかり処方する医療機関もあるようです。ご存じのように漢方薬はひとりひとりの体質や病状によって処方が違ってきますので、このような医療機関から漢方薬を処方された場合は注意したほうがいいかもしれません。

あなたに合った漢方薬ですと、飲み続けるうちに体質が改善されて症状が緩和され、翌年には今年とは比べものにならないほど快適な春先を迎えることも夢ではありません。アレルギー体質を漢方薬で改善し、症状がひどいときには抗ヒスタミン剤などで症状を抑えるという方法が、現代社会では好ましい方法のひとつかもしれません。

あなたに合った漢方薬がどれかは、あなたの体質により異なります。自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶようにするのがいいでしょう。
参考症例・エッセイなど
 
以下の症例・エッセイ・関連ページも参考になさってくださいませ。
(日経DIコラムは薬剤師向けに漢方を解説するサイトですが、それ以外のかたも閲覧可能です。症例ものせて、わかりやすくまとめました)


自分にあった漢方薬に出会うには?
 
自分にあった漢方薬を入手するためには、専門家のカウンセリングを受けるのが第一です。漢方の専門家が、あなたの体質を判断し、あなたに最適な漢方薬を処方します。詳しい解説については、こちらをご覧ください。または下記の連絡先まで、お気軽にご相談・お問い合わせください。


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