薬石花房 幸福薬局
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25歳の女性で、子宮内膜症のかたがいました。激しい生理痛が苦痛の種です。数年前に病院のホルモン治療を受けたことがあります。しばらく生理をとめる治療法とのことで不安がありましたが、治療後は強烈な生理痛には見舞われなくなりました。しかし最近また激しい生理痛に襲われるようになりました。病院へ行くと、前回と同じ治療をすることになると言われました。しかしまた生理をとめるのが心配で、漢方を希望してカウンセリングに来ました。

子宮内膜症とは、本来子宮の内側にあるべき内膜組織がそこ以外の場所に発生する病気です。内膜組織は子宮以外の場所でも月経周期にあわせて増殖と剥離、出血を繰り返します。毎月おなかの中に勝手に傷ができるような感じです。ふつうの子宮内膜は剥離、出血のあと月経として体外に排泄されますが、それ以外の場所では血液が体外に排出されず、その場で内出血のようなかたちで残ります。そのような状態が毎月繰り返される結果、炎症を起こしたり、血腫を形成したり、まわりの臓器と癒着を起こしたりします。このために激しい生理痛や腰痛が引き起されるのが子宮内膜症の特徴です。一ヶ月ごとに病変部分が増殖・出血を繰り返すので少しずつ悪化しやすいのも特徴です。子宮内膜症患者は増加傾向にあり、成人女性の10人に1人がかかるといわれています。

とくに癒着により不自然な状態に組織同士がくっついてしまうと、卵胞の発育や排卵の影響で卵巣が大きくなったり小さくなったりするたびに引きつるような痛みを感じたり、また日常的な動きでも腰痛や腹痛を感じたりするようになります。癒着を起こした臓器自身の機能も悪くなります。

子宮内膜症は月経とともにある病気ですから、妊娠中や閉経後など月経のない状態では症状は軽減します。子宮内膜症になったら医師から「早く妊娠しなさい」と言われることがあるのは、そのためです。

さて現代医学では、人工的にホルモンバランスを操作して妊娠中や閉経後と同じホルモンの状態にすれば子宮内膜症の治療になるという考えに基づいて薬物治療をしています。治療中は強制的に生理をとめますので子宮内膜組織が肥厚・出血することもなく、生理痛などの症状は軽減されます。病変も縮小します。しかし副作用の問題があるので長期にわたってこの治療を続けることができず、約半年で治療は終了します。そのあとは生理やホルモン分泌状態が元どおりに回復し、多くの場合、再び病変が拡大し悪化していきます。西洋医学的には子宮内膜症は再発を繰り返しやすい病気といえます。「西洋医学では」も参考にしてください。

一方、漢方では子宮内膜症の原因を気や血の流れの阻滞や内臓機能の低下に見出して改善しています。気や血の流れが悪い場所では痛みや出血、炎症を起こしやすく、また内臓機能が弱くなると抵抗力や免疫力が衰えて邪気が体内に侵入しやすくなり、その結果、病変ができやすくなります。

気の流れを悪くするのは精神的ストレスや過度の情緒変動などです。血の流れを妨げるのはバランスを欠いた食事や冷え、それに気の滞りなど多々あります。内臓機能を低下させるのは不摂生な生活や過労、睡眠不足などです。たばこの吸いすぎもよくありません。大気汚染物質や食品添加物も長く体内にとどまって気や血の流れの邪魔をします。まさに現代社会は子宮内膜症にかかりやすい環境ではありますが、日常生活ではできるだけ気になる要因は遠ざけるように配慮したほうがよさそうです。

冒頭の女性の場合も、烏薬や木香などの生薬で気の流れを整え、莪朮や牡丹皮などで血の流れを滑らかにし、黄耆や党参などで基礎的な抵抗力を身につけるようにしました。その結果、順調な生理を維持しながらも3ヵ月後には激しい生理痛がなくなり、6ヵ月後から漢方薬の服用量を少しずつ減らして順調に経過しています。

漢方は、自然な体内のホルモンバランスを人工的に操作するのではなく、自然な月経を維持したまま気や血の流れを調整して症状の軽減を図ります。

なお子宮腺筋症という病気がありますが、これも子宮内膜症の一種です。子宮の筋層内に内膜組織が霜降り肉のように入り込んで、月経のたびに子宮全体が腫れたり、こぶのようになったりする病気です。症状は一般の子宮内膜症と似ていますが、子宮筋腫と間違われることもあります。
薬を使う方法と手術をする方法とがあります。症状をなくすためには子宮と卵巣を全部摘出するのが単純で簡単ですが多くの女性はそれを望みませんので、薬による治療が主流です。

薬を使う場合はホルモン剤の注射や点鼻薬、内用薬を使って人工的に妊娠中または閉経後のホルモンバランスにして月経をとめます。

GnRHアゴニスト治療という治療法に用いられる薬剤(スプレキュア、ナサニ−ル、リュ−プリンなど)は脳に作用して女性ホルモンの分泌を抑えることにより排卵と月経をとめます。治療中は更年期と同様のホルモン状態となり、のぼせ、肩こり、倦怠感などの更年期障害が現れます。また骨粗鬆症になる危険があるので、治療期間は半年間が限度です。

男性ホルモン系の合成ステロイドホルモンで生理をとめるダナゾール療法という方法もあります。この場合は薬剤(ボンゾールなど)の男性ホルモン作用による体重増加、にきび、多毛などの副作用が出ます。肝機能障害や血液が固まりやすくなる場合もあります。

いずれの方法でも月経がなくなるので、治療中は生理痛などの症状は改善されます。しかし治療をやめると月経が再開しますので、治療後に症状が再び悪化することも少なくありません。

妊娠しているのと同じ状態にして生理をとめて子宮内膜症の症状を軽減する方法にはピル(経口避妊薬)が使われます。12ヶ月間まで使用できますが再発率が高く、不正出血や肝機能障害などの副作用も少なくありません。現在は副作用を少なくするために含有ホルモン量を減らした低用量ピルが広く使われていますが、そのぶん治療効果が下がります。

手術も開腹して子宮と卵巣を全部切り取るだけでなく、最近ではおなかに小さな穴を開けてレーザーや高周波で病巣を焼き切ったり癒着をはがしたりする腹腔鏡手術もあります。

気の流れがよくないときは膈下逐湯、血の流れに問題があるときは血浄飲加減、虚血性の症状を伴う場合は聖癒湯、ホルモンバランスを整えたい場合は調肝湯などが用いられます。


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