薬石花房 幸福薬局
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女性は生まれた瞬間、すでに約200万個の卵子を卵巣に蓄えています。その後、卵子の数は減る一方で、生まれてから卵巣で新たに卵子がつくられることはありません。あなたのおなかの中にある卵子は、あなたが生まれたときからあったものです。あなたは母親から生まれましたが、あなたの元になった卵子は、あなたのお祖母様の体内でつくられていたことになります。命はつながっています。

今度の生理で排卵される卵子も、あなたが生まれたときから卵巣内にあった卵子です。あなたから排卵される卵子は、あなたとともに生まれ、生活をともにしてきたことになります。すこやかに育ってきた卵子は将来、元気な赤ちゃんになると思います。

適齢期にうまく妊娠しない場合、現代医学では、排卵障害や子宮内膜症の存在など局所的ですが科学的な視点で対処していきます。一方、漢方では、子宮や卵巣を含めた女性のからだ全体と卵子そのもの、そして男性側の体調と精子の状態など、それら全体の調子が良好ではないときには、なかなか妊娠しないと考えます。

妊娠の仕組みは複雑です。漢方では、両親が心身ともに充実し、母体内の気と血液の流れがよくなったときに妊娠できると考えています。ですから妊娠しにくいときは、漢方薬で男女両方の体調を整えて、赤ちゃんを迎えるに十分な環境を整備していきます。そうすることにより、たとえば子宮内膜症のように妊娠しにくい環境においても妊娠しやすくなります。

32歳の女性の例です。結婚して4年目ですが子宮内膜症があり、なかなか妊娠しません。産婦人科では子宮内膜症と不妊症の治療にホルモン療法を勧められてます。しかし生理も順調に来ており、ホルモン治療は受けたくありません。

このかたの場合は、子宮内膜症を改善する漢方薬と一緒に、桑寄生、菟絲子など懐妊しやすくなる生薬を服用してもらい、7ヶ月で妊娠しました。

このように、西洋医学的には妊娠しにくい病気をかかえていても、漢方薬を服用することにより妊娠しやすい元気な卵子をつくったり、また着床しやすい豊かな子宮内膜を用意したりと、漢方には前向きの効果があります。

西洋医学では不妊の原因を科学的に解明するところから始まります。最近では子宮内膜症と子宮筋腫が原因になっているケースが増えているようです。子宮内膜症により卵子が卵管を通りにくくなったり、子宮筋腫により子宮内膜に受精卵が着床しにくくなったりします。大きな筋腫が胎児を圧迫して流産することもあります。

そのほかにも女性側の不妊の原因としては、排卵障害などがあります。排卵障害があるときは排卵誘発剤を用いて、脳から分泌されるホルモンを人工的に調整し排卵を促進します。多嚢胞性卵巣症候群という、卵巣の表面が硬くなって卵子が外に出にくくなる場合もあります。子宮内膜症でも同様の障害が出ることがあります。なお排卵誘発剤による治療過程で、卵子が十分成熟しないまま排卵されることもあります。子宮内膜の肥厚が十分でないために受精卵がうまく着床できないケースもあります。その他、月経不順や冷え症、血行障害、精神的ストレス、肥満、自律神経の失調によっても妊娠しにくくなります。

現代医学の検査技術をもってしても両親の身体に異常が見つからない原因不明の不妊もあります。不妊症全体の約三分の一が現代医学では原因不明の不妊です。

35歳の女性のケースです。ご主人ともども仕事をもち多忙な毎日ではありますが、とくに体の不調もなく生理も順調です。しかし結婚して3年たっても妊娠しません。病院で検査を受けましたが夫婦ともに異常はありません。

このかたには香附子などストレスや緊張をほぐす生薬とともに、身体に活力を与える生薬である鹿茸や杜仲などを服用してもらいました。ご主人にも似た作用の生薬を飲んでもらいました。4ヵ月後に奥様の妊娠が確認されました。

漢方薬はからだ全体のバランスを整えたり活力を補ったりすることにより、新しい生命を創りだし育てるだけの気力と体力を母体内に準備します。漢方薬には、正常な排卵を促し、そして受精卵を子宮に安定的に着床させる環境を作る作用が認められています。ホルモンバランスを調え、血行を改善し体力をつけて体調を整えることにより、自然に妊娠できるようにするのが漢方です。

不妊の原因は女性の側だけにあるのではありません。男性の側にも精子の運動性の低下や精子の数の減少などの要因があれば不妊の原因となります。また奇形精子が多い場合にも受精は困難になります。ダイオキシンなどの環境の影響で精巣の造精機能が低下して精子が減少しているという報告もあります。不妊の原因の約50%が男性側にあるといわれています。

一度に射精される精子の数は約1億個です。卵子の周囲に無事たどり着くのは、そのうちの100個以下です。精子の数が少なかったり運動性が乏しかったりすると妊娠しにくいのはそのためです。

40歳の男性の例です。精液中の精子数が少なく、精子過少症と診断されました。奥様が同年齢であることもあり体外受精をしていますが妊娠しません。ご主人は仕事が多忙で睡眠時間も短く、精神的ストレスを強く感じています。疲れも慢性的で、なかなかとれません。

この男性の場合は、ストレスをやわらげる生薬にプラスして、精力を強烈に補うために西洋参や鹿茸などの漢方生薬を服用してもらいました。心身を酷使する仕事を続けながらの服用でしたので1年以上かかりましたが精子の数が徐々に増え、体外受精をして奥様が妊娠しました。

このように現代医療技術との併用により成果をあげる場合もよくあります。

西洋医学では、タイミング指導や人工授精、体外受精・胚移植、顕微授精などが行われます。

不妊治療の過程では排卵誘発剤が用いられます。脳のホルモン分泌に直接作用させるクロミフェン(クロミッドなど)やhMG(ヒュメゴンなど)などがその代表です。また受精卵の発育を助ける黄体ホルモン補充療法(デュファストンなど)も行われています。

不妊の原因に子宮内膜症や子宮筋腫が関係しているときは子宮内膜症や子宮筋腫の治療薬が投与されます。腹腔鏡手術や開腹手術が行われることもあります。

クロミフェンは、3周期以上使うと子宮内膜が薄くなるなどの副作用があり、妊娠しにくくなります。不妊治療薬は、排卵誘発剤に限らず、自然の性ホルモン系に人工的に手を加えているのですから、副作用はある程度さけられません。

男性側の不妊に対しては、代謝賦活剤やビタミン剤、ホルモン剤などの薬物が投与されます。また精管に閉塞がある場合や睾丸の血流を阻害する静脈瘤がある場合は、手術が行われることもあります。

体力や精力が不足している場合は養精種玉湯、ストレスがかかり、気の流れが悪いときには開鬱種玉湯、太り気味で生理が遅れぎみの場合は蒼附導痰湯、腹部の冷えがある場合には艾附暖宮丸などの処方を使って、妊娠しやすい体質にもっていきます。

男性の場合は、精子の運動性や受精能力を向上させたり精子の数を増やしたりするために鹿茸大補湯、知柏地黄湯、右帰飲、八珍湯、四逆散などの処方を用います。

中国である程度普及している周期療法という不妊治療法についてはコラム「中国の不妊治療『周期療法』について」を参考になさってください。

なお、以下のエッセイ・ショートストーリーも参考になさって下さいませ。

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