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 ストレス・疲れ・いらいらが、口内炎の原因に
■■ストレスで増える口内炎■■

 会社のストレスで、お腹が痛い。わたしはストレスが胃にくるタイプ。

 今の職場、ストレスの原因は、上司の部長にある。うちの部長、仕事熱心でまじめで、仕事がよくできると評判が高い。スーツがよく似合い、お腹も出ていない。年齢は40歳代で、独身。そんなわけで、ほかの部の女性社員の人気は高い。

 とてもやさしい部長ではある。でも、いらいらしたり、怒鳴ったりすることも多く、部下はみな部長の機嫌に関して、いつもぴりぴりしている。わたしも尊敬しているし、親しみも感じているけれども、その日のご機嫌に振り回されることも多い。

 じつは先日、経理処理の書類で、うっかりミスをしたばかり。しかもきょうの部長は機嫌がわるく、朝から眉間にしわが寄ったままだ。まだ怒られていないだけに、気が気ではない。胃が痛む。

 胃の調子がわるくなると、次は口内炎だ。子どものころから、胃が弱ったり、疲れがたまったりしたときには、必ず口内炎ができていた。いつの間にか唇の裏や頬の内側にぷつっと現れ、だんだん大きくなり、真ん中が白くただれる。こうなるとトマトや醤油が付いただけで涙が出るほど痛くなる。歯磨きも染みてたいへんだ。

 口内炎が出ると市販の軟膏を塗って治している。でも今回は市販の軟膏を塗っても口内炎が引っ込まないので、帰りに会社の診療所へ行ってみた。すぐに薬を出してくれたが、市販のものと同じ薬だった。

 薬を受け取り、会計をしているときに、驚いたことに部長が診療所に入ってきた。部長もびっくりし、そしてわたしに渡された軟膏を見て言った。

「安藤さん、君も口内炎か?」

 聞くと部長もしょっちゅう口内炎に悩まされているらしい。会社の診療所の常連にもなっているようで、口内炎の軟膏だけ窓口で受け取って会計を済ませた。

 せっかくの機会だからと、部長が帰りにバーに誘ってくださった。ちょっと緊張したけれど、部長は冗談も多く、話題も豊富で、楽しく時を過ごすことができた。このあたりが、仕事がよくできることと関係あるように思った。

 部長に聞いてみた。

「部長は女性社員に人気がありますね」

「いやいや、人気がないからこの年まで独身なんだよ。それよりも最近は仕事の責任も重くなって、どうもいらいらしやすく、おかげで口内炎の大きいのが舌にも出る始末だよ」

 なるほど、部長も苦労しているわけね。その日は、ストレスや疲れ、いらいらで口内炎が悪化するという話でも盛り上がった。

 そんなある日、友人の光代から、口内炎に漢方が効くかもしれないという話を聞いた。光代は口臭の悩みを漢方薬で解消したという。

「久美子、漢方薬を試してみたら?」

■■■肝や脾から生じる口内炎■■

 口内炎と口臭は関係ないのでは、と思いつつも、漢方薬は体内の調子をととのえて病気を根本的に治していくらしい、という光代のアドバイスに引かれ、漢方薬を飲んでみることにした。わたしの場合は、きっと胃の調子と口内炎が深い関係にあると常々思っていた。

 漢方薬局で先生のカウンセリングを受けたあと、先生が説明してくださったところによると、やはり胃腸の疲れが口内炎として出ているとのことだった。

「久美子さんの場合は、もともと消化器系の機能が弱い脾気虚という体質があります。脾は五臓のひとつで消化吸収や代謝機能を指します。そこにストレスの影響でさらに脾が衰退し、余分な熱が浮いてきて口内炎を引き起こしているようです」

「ストレスの影響を受けやすい体質ということですね」

「それプラス、胃腸が弱い体質です。ですから強いストレスがかかったときだけでなく、疲れたときにも口内炎ができると思いますが、どうですか」

 たしかに漢方の先生のおっしゃるとおりだと思う。わたしは消化器系の機能を補い(漢方道の必殺技@)、かつ気の流れを調えてストレスに丈夫になる(必殺技B)漢方薬を飲むこととなった。人参、白朮、山薬などの生薬が調合された漢方薬だ。

「ストレスとか疲れとか、そういうことに対する気持ちの持ち方も体調には大きな影響を与えるのですね」

「そのとおりです。意識の持ち方というのも、漢方では重要視しています」

「わかる気がします」

「とくに、自分のからだを大切にするという意識が大切です。まず自分自身が楽になります。さらに気持ちの面で安定していれば、仕事の面でも安定してきますし、周囲の人に対しても伸びやかで落ち着いた雰囲気が伝わるので、人間関係も良くなっていくものです」

 自分のからだを大切にして丁寧に生きる姿勢を"漢方的スローライフ"というそうだ。

「漢方的スローライフを送るうえで、まず大切なものは何ですか?」

「そうですね、久美子さんの場合は笑顔でしょうかね」

 先生はにこやかに、そうおっしゃった。

 そうだ、そういえば部長も、いらいらするたびに口内炎が繰り返し出る、と言っておられた。軟膏を塗れば治まるが、またいらいらすると再発する、とも。

「それは五臓の肝に負担がかかり、やはり熱が燃え上がって口内炎を生んでいる体質です」

 翌日、さっそく部長にも漢方薬を薦めてみた。

■■笑顔を常に■■

 口内炎は、漢方を飲み始めてすぐに改善され、3ヵ月後には胃の調子も良くなった。漢方の先生は、もうそれで大丈夫、とおっしゃり、それで漢方薬を飲むのは終わった。そのあと半年ほど経つが、口内炎は出ていない。

 そんなある日、帰りにまた部長と一緒になり、この前と同じバーに連れて行っていただいた。

 部長も漢方薬を飲むことにしたそうで、それ以来体調がよく、いらいらもあまりしなくなり、口内炎も出なくなったようだ。

「あのころは仕事に没頭するあまり、自分と仕事との距離感をなくしていたよ」

「がんばる姿も素敵ですけどね」

「でも、がんばる、がんばらない、は自分の問題であって、周りに人にとってはあまり関係ないんだよね」

「本人はがんばっているつもりでも空回りしていることもありますものね」

「そう、がむしゃらに邁進しているつもりでも、仕事の成果ばかりを意識してしまい、会社の仲間や周囲にいらいらして当たったり、暗い顔をして周りの雰囲気をわるくしたりしていては、社会人として立派とはいえないね」

 部長は部長なりに悩んでいて、それでついつい、いらいらしていたのかもしれない。でもこうして素直に反省して、今後もっと良くしていこうという態度はじゅうぶん立派な社会人だと思った。

「さすが部長ですね」

「がんばる、がんばらないよりも、仕事に集中するときと、自分を支えてくれている周りの人たちに穏やかに感謝するときと、その両方が必要だということを意識しなくてはいけないな、と思ったよ」

「漢方の先生も、意識することが大切だっておっしゃっていました」

「どの世界でも大事なことなんだだね、しっかり意識するということは」

 部長は穏やかな顔でおっしゃった。そういえば最近、眉間にしわが出ることが減った。

「これからは、もちろん仕事の手はぬかないけど、笑顔を忘れずにいようと思っているんだ」

 結局、そういうことになるのね。漢方の先生と同じだわ。わたしも漢方的スローライフで笑顔を忘れずにいたいな、と改めて思った。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『春菊と帆立貝の和え物』

材料(2人分):
春菊 1ワ(約150g)
帆立貝 刺身用 (薄切りにする)  50g
ごま油 大匙1
塩 小匙1/2


作り方:
@ 春菊は熱湯で色よくゆで、冷水で洗ってしぼり、3センチぐらいに切りそろえる。
A ボウルで@と残りの材料をよく混ぜ合わせる。

● かぜの予防に春菊を!

(2008年2月号)

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