薬石花房 幸福薬局
ENGLISH サイトマップ
中医学のはなし
証をみるということ
現代日本における疲労倦怠感の証の特徴
花粉症に対する健脾利湿法の有効性
「証」別インデックス
 ├  腎虚
 ├  肝鬱
 ├  気滞
 ├  寒痰
 ├  気虚
 ├  陰虚(1)
 └  陰虚(2)
美容と中医学


56歳、男性。貿易会社役員。
最近めっきり疲れやすい。朝からだるく、疲れがとれない。歳のせいか小便も近く、近頃は夜間に2〜3回トイレに立つ。のどもよく渇く。夜トイレに起きるときも、ついでに水を飲んで渇きを癒す。これも歳のせいか、肌がカサカサして痒い。夜は手足がほてり、布団から手足を出して寝ている。朝起きると上半身に寝汗をかいていることが多い。
見たところ、やや肥満タイプ。食欲は旺盛でよく食べるという。舌は赤く、乾燥している。脈は速いほうだ。
血糖値が高めなのが気になるという。糖尿病になる前に何とかしてほしい、との相談だ。
この人は、体が水分不足でほて火照りやすいような体質をしている。こういう体質を中医学では「陰虚」と呼ぶ。慢性的なストレスや消化器系の機能低下、水分代謝機能の失調などが原因で起こる。陰虚の「陰」は体内の正常な水分のことで、「虚」は不足を表す。
陰虚になると自律神経が失調し、疲労倦怠感や脱水状態が募る。さらに代謝異常を引き起こす。日本の国民病の感さえある糖尿病になりやすい体質である。



日本人の約5%が糖尿病体質であり、40歳以上になると10人に1人が糖尿病という調査もある。糖尿病は、膵臓で産生されるインシュリンというホルモンの量が減り、血液中の糖分量が慢性的に過剰になる体質のことである。
ただし血糖値が高くても自覚症状の表れない場合も多く、そのため放置する人も多い。しかし糖尿病は放っておくと合併症を引き起こす。腎臓障害、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、白内障、網膜症などが主な合併症である。神経障害を伴うことが多く、足のしびれや痛み、立ちくらみや寝汗、動作の緩慢などを引き起こす。また、こむら返りを起こしやすくなる。



現代医学に糖尿病治療の決め手は、ない。インシュリン製剤で血糖値をコントロールしているだけである。多くの場合、食事療法と運動療法が併用される。
現在の食事療法は西洋の栄養学に基づいており、カロリー制限が主体となっている。もちろんカロリーを抑えることは重要だが、中医学では改善効果のある食物を積極的に摂るように指導している。
西洋の栄養学に相当するものを中医学では「食養」と呼び、養生のひとつを占める。陰虚の場合だと、山芋を多く食事に取り入れるように勧める。糖尿病の人には、カボチャも効果的だ。山芋なら一日約20グラム、カボチャなら主食の米代わりに食べるくらいの量を摂ること。大豆もよい。大豆やカボチャは膵臓の機能を亢進してくれることもわかっている。
玄米、黒胡麻、海藻類なども、高血糖で汚れた血液をきれいにしてくれる。逆に肉類や乳製品は、血液の浄化に悪い影響があるので、減らす必要がある。蛋白質は肉から、というのは西洋栄養学の弊害である。日本人は体質的に、玄米や豆類などから充分な良質蛋白が摂取できるのだ。さらに肉食を減らせば脂肪の摂取量も減り、その分膵臓への負担も減る。



陰虚の体質を改善する薬は、現代医学にはない。しかし、体質を改善する働きの強い生薬があり、中医学ではそれらを用いている。以下に紹介するような生薬を服用し、食事を中心に日頃の養生を怠らなければ、糖尿病の快癒も可能なのである。
たとえば西洋人参。ウコギ科西洋参の根。広東人参ともいう。陰虚を強く補い、さらに滋養強壮作用が強いので、陰虚でかつ疲れやすいタイプの人に向いている。一日2〜9グラム煎じて飲む。
あるいは沙参。セリ科浜防風の根。陰虚を補う代表的生薬。口渇、皮膚の痒み、コンコンという乾咳などに常用する。一日9〜15グラム煎じて服用する。
陰虚体質を改善する生薬は多数あり、一人一人の体質により、適する生薬は違ってくる。一般には数種類の生薬を組み合わせて服用する。生薬は、信頼できる漢方薬局でよく相談して選んでほしい。
今回は糖尿病を中心に話を進めたが、高血圧や高脂血症、痛風など他の成人病にも陰虚タイプの人を多く見かける。またアトピー性皮膚炎でも、顔が火照ったり、皮膚がカサカサしたり、夜間に痒みがひどくなったり、のどが渇いたりするタイプは陰虚である。ただ症状を抑える薬を塗るだけでなく、自分にあった生薬を服用して陰虚体質を改善してほしい。
なお冒頭の会社役員は、生地黄、天花粉、天門冬、沙参、人参、霊芝などの生薬を服用し、200以上あった血糖値を120にまで下げた。


All Rights Reserved. Copyright (c) Kofukuyakkyoku.