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美容と中医学


去年まで全く平気だったのに、今年は花粉症で鼻水がズルズルでる。くしゃみの連発に目の痒みを伴う不快な日々が続く。急に襲われた悲劇に慌てて漢方薬局を訪れる紳士淑女は、毎年増える一方である。
35歳、男性。コンピュータ関連企業の営業マン。2年前から花粉症になり、この時期が特につらい。会議や交渉中にくしゃみが続けて出る。画面をのぞき込んでの説明中に、タラーッと鼻水が鼻孔を流れる感触に慌てて上を向き、ポケットティッシュで鼻をかむ。目が痒く頭が重く、集中力に欠ける。いつタラーッが来るかと、プレゼンテーション中も気が気でない。大事な会議の前には市販の鼻炎薬を飲むことにしたが、眠気がするし頭がボーッとするし、鼻の奥や喉がカラカラに乾いてつらい。漢方で何とかしたい。
見たところ色白で中肉中背、手足が冷えるという。アルコールはビール党、清涼飲料や果物も好物。尿は透明で、量が多い。便は柔らかめで、深酒の翌朝は下痢しやすい。舌を見れば白っぽい。



この人は典型的な花粉症タイプ。余分な冷たい水が胸の辺りに溜まっており、ちょっとした刺激でそれが鼻水やくしゃみ、涙として出てくるのだ。
こういう、人体に余分な水分で、しかも冷たいものを中医学では「寒痰」と呼ぶ。「痰」は、正常な人体には不要で過剰な水分のことで、喉に絡む痰を含む広い概念を指す。



胸の辺りにお風呂の浴槽があるとイメージしてほしい。なみなみと浴槽に張られた水が寒痰である。水を入れすぎると、それが浴槽からあふれて、鼻水やくしゃみとして体外に出てくるのだ。
水の量が浴槽に比べて少ないときは、寒痰が溜まっても鼻水は出ないが、水が浴槽の縁を超えると突然鼻水が出てくる。だから花粉症は、ある年から急にかかる人が多い。
花粉症になりやすいタイプは、この胸部の浴槽に水が溜まりやすく、しかも浴槽の容量が小さい人だ。清涼飲料や冷たい果物が好きな人、ビール党、甘党で、寒がり、冷え症の人に多い。普段から軟便で、尿量が多い。



花粉症予防のポイントは、大きくふたつある。ひとつは過剰な水分を摂りすぎないように注意すること。のどが乾いても自動販売機の清涼飲料よりは温かいお茶で潤す。酒を飲むにもビールより日本酒やワインがよい。
もうひとつのポイントは体を冷やさないこと。体が冷えると、胸部の浴槽が小さくなり、寒痰があふれ出やすくなる。生野菜や果物よりは温野菜、冷奴よりは湯豆腐と、火の通ったもののほうがよい。流行りの青汁は体を冷やすので、こういう人には逆効果だ。注意してほしい。
夏の水分の過剰摂取も体を冷やし、寒痰を根雪のように蓄積することになる。夏は鼻水も出ないから、と安心しないでほしい。
日々口にするものなので追加しておくと、同じ米でも白米より玄米のほうが体を温める力が強く、また同じ甘味でも精製白糖(砂糖)より蜂蜜や黒糖のほうが体を温める力が強い。特に砂糖は体を冷やす働きが強いので、砂糖で甘くした清涼飲料は水分、冷えの両面からできるだけ避けるようにしたい。



一旦寒痰の溜まった体や冷えた体は、食事に気を付けるだけでは元には戻せない。胸部の水はけをよくして寒痰を取り除く力の強い生薬や、体を温める働きの強い生薬を摂るようにしてほしい。これらの生薬は非常に種類がたくさんあり、小青竜湯や葛根湯などの漢方処方にもこれらの生薬がうまく組み込まれているが、小青竜湯とて体に合う人はせいぜい2割程度だから、よく漢方薬局で相談して自分にあった生薬を選ぶようにしたい。
たとえば半夏。サトイモ科カラスビシャクの球状塊茎。日本各地に野生する。寒痰を取り除く作用が大変強い。9〜12グラムを煎じて飲む。
または路路通。マンサク科フウの果実。抗アレルギー作用があり、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹に用いられる。3〜15グラムを煎じて服用する。
市販や病院の鼻炎薬や抗アレルギー薬は一時的に症状を抑えてくれるが、体質から根本治療する働きは全くない。眠気、頭重、のどの渇きなど副作用もあるので注意してほしい。
なお前述の営業マンは生薬を4ヶ月間煎じて服用し、体質を改善してめでたく花粉症と訣別した。


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