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老化が30代から始まっているという自覚をお持ちだろうか。次の症状は全部「老化」の兆候である。最近朝起きにくい、疲れがとれにくくなった、肌のつやがない、だるい、酒が朝まで残る、忘れっぽくなった、集中力が低下した、髪がぬける、口臭が気になる、胸やけ、イライラ、腰痛、等等。ちなみに40歳の平均余命(あと何年生きられるか)は男38.13年、女44.00年である。人生の後半、なるべく老化の速度を抑え、成人病に苦しむこともなく健康に過ごしたい。そのためには30代からの養生が肝心である。
老化は中医学では「腎虚(じんきょ)」にあたる。「腎」は腎臓だけでなく、成長、発育、生殖機能を指す。「虚」は不足や衰えのことである。従って腎虚とは、成長、発育、生殖機能の衰え、つまり老化を意味する。腎虚が増すと、動脈硬化、肝臓病、痛風、糖尿病、癌など、いわゆる成人病の諸症状が出てくる。だがこうした病気は突然起こるのではなく、健康なつもりでいる間に徐々に腎が虚して(衰えて)いった結果として、ついに表れたものなのである。
「中医学(ちゅういがく)」(中国の医学)では、この発病前の状態を「未病(みびょう)」と呼び、未病を改善することこそが医学の要諦であると考える。そしてその方法が、以下に述べる「養生」である。
老化を防ぐ30代からの養生では、まず食事を改めてほしい。男女とも40歳以降、身長、体重が減少し、体内臓器も退縮するため、若い頃と同じ食事では体に負担になる。具体的には肉類や魚介類の摂取量を減らすべきである。もともと日本人の内臓は低カロリーの植物性たんぱく食に合致している。我々の内臓は、滅多に鳥獣を口にしなかった祖先の内臓とほとんど同じままである。そこに肉など高カロリーの動物性たんぱく食が入ると、体外に排出すべき老廃物がいつまでも体内に残留する。これが「気(き)」(生命エネルギー)や「血( けつ)」(血液や栄養)の潤滑な流れを疎外する結果、腎が虚し、成人病や老化を引き起こす。日本人に必要なたんぱく質は、大豆や玄米などの植物に充分に含まれている。たんぱく質は肉から、という西洋伝来の栄養学は日本人の体には無理をもたらす。
食事のもう一つのポイントは、量である。腹八分を旨としてほしい。食物の過剰な摂取も体内に老廃物を生じ、腎虚を加速する。また米国保険会社の調査によると、肥満度が20%増えると死亡率は1.2倍になるという。貝原益軒曰く、「節すれば楽かぎりなし」である。
食事の次は運動。たとえば30分歩くと150kcal消費する。充分とはいえないながら、一日30分でも歩くとよい。歩く効用はカロリー消費だけではない。歩けば内臓が刺激され、新陳代謝が活発になり、基礎代謝量も増える。深い呼吸も習慣づけられる。さらに汗をかけば水分代謝もうまく運ぶし、精神的にもすがすがしい。その結果「気」、「血」のめぐりがよくなり、腎虚も補われる。
腎虚に用いる生薬は多いが、ここでは鹿茸(ろくじょう)と杜仲(とちゅう)を紹介する。30代からこれらの生薬を服用することをお薦めする。余談だが、疲労回復用の栄養ドリンクは、即効性はあるが数時間の効果しか期待できず、もちろん腎虚を補う力も無い。ドリンクを常用するかわりにその費用を生薬代に代えて、腎を強め、疲労しにくい体質になった方が賢くはなかろうか。
鹿茸はニホンジカ、マンシュウジカの雄の幼角。腎虚を強烈に補ってくれる。古典医学書にも多く絶賛され、「名医別録」に「久しく服すれば老いに耐える」とある。特に中国や韓国では老化防止や体力回復によく用いられる。鹿茸を用いた代表処方は鹿茸散、鹿茸大補湯、参帰鹿湯などで、一日の服用量は0.5〜3gでよい。一般的には煎じて飲む。高麗人参や当帰と一緒に煎じるとさらによい。
杜仲はトチュウの樹皮。腎と肝を補う力が強い。世界最古の本草書「神農本草経」には「久しく服すれば身を軽くし、老いに耐える」とある。腎虚に対する代表処方の右帰飲や右帰丸に配合されている。一日の服用量は6〜30g。約20分間煎じて服用する。多めの水で煎じて、お茶代わりに飲んでもよい。なお流行の杜仲茶はトチュウの葉なので別物である。
鹿茸、杜仲などの生薬は漢方薬局で入手できる。煎じ薬を扱う漢方薬局がよい。あなたの症状に合わせて、他の生薬との組み合わせや処方も勧めてくれる。
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