 |
 |
人には生まれながらにして体質があります。その体質にそぐわない生活を続けた場合、その人の体質は少しずつ変化し、悪化します。
人類は、およそ500万年前に地球上に誕生しました。そして約15万年前には、私たち現代の人類であるホモ・サピエンスが誕生しました。その身体構造は、現在の私たちと大きな違いはなく、とくに5万年前からはほとんど変わっていないことがわかっています。私たちのからだは、縄文時代よりもずっと昔と同じ構造なのです。
人類は、長いあいだ狩猟採集生活を営んできました。山を歩き、木の実、果実、根や茎、それに穀類などの植物性の食料をとって食べていました。たとえば縄文時代は植物性の食料への依存度が高く、たんぱく質の80パーセントを木の実などの植物に頼っていました。しかも、おなかいっぱい食べられるほど、食べものが十分にあったわけではありませんでした。
私たちのからだは、そのような食生活に適した構造をしています。たとえば小腸の長さは6〜7メートル、心臓の重さは200〜300グラム、骨の数は206個、身長は150〜180センチ、体重は40〜70キロなど、およその値ですが、これが5万年前と変わらない、現代日本人の身体です。木の実や穀物、魚を中心とした食生活に適した身体構造のままです。
――そのからだに不釣合いな食べものをとり続けると、からだに負担がかかり、体質が悪化するというわけね。
そのとおりです。食生活だけではありません。運動不足も体質悪化のもとです。生活環境や習慣の変化が体質を悪化させるのです。現代の慢性病の多くは、いずれもこの体質の悪化と深い関係にあります。
そして美容も、体質の悪化との関係が深いのです。肌のトラブルは、体質を改善することにより初めて根本的に改善や予防ができます。
|
 |
人間のからだの構造は変わらないのに、生活環境や生活習慣が変化して、それが体質の悪化につながってきました。体質悪化の原因にはいろいろありますが、ここでは運動不足、食習慣の欧米化、ストレスについて、見てみます。
まず私たちは運動不足になりました。今では農林水産業に従事しているのは日本人の5パーセントにすぎませんが、わずか50年前の日本では、約半数の人が農業や漁業に従事していました。仕事の面だけみても、からだを使うことが減ってきているのです。さらに私生活においても、昔は歩いて出かけたところに、今では車に乗っていきます。
――だって、忙しいし、時間がもったいないし、楽なんだもん。
時間を有効に使うことは大切です。楽な生活は魅力的です。ただし、それにより身体には過剰な栄養がたまり、しだいに体質が悪化していくこともあることを忘れないでください。美しい肌とからだを維持したいのなら、言い訳をみつけるよりも、からだが欲しがることをするほうがいいでしょう。
食事の内容の急変も、体質悪化の大きな原因です。それまで日本人があまり食べてこなかったもの、とくに欧米型の食品を、ここ数十年で急にとるようになりました。たとえば牛乳や牛肉が一般に普及するようになったのは、1950年代からです。そもそも日本には食用の牛はおらず、牛乳や牛肉が日本で認められはじめたのは明治維新のころです。明治時代の中ごろからは牛鍋やすき焼きが食べられるようになりましたが、それでも牛肉が庶民の口に入ることは多くはありませんでした。それが1950年代からは、牛乳や牛肉だけでなく、加工肉、乳製品など高たんぱく高カロリーの欧米型の食材が大量に食卓にのぼり、過剰に日本人の胃腸を通過することになりました。その結果、日本人のからだには必要以上の栄養が供給され、それが体内に蓄積され、血液の状態がわるくなり、さまざまな慢性病の原因となっています。
――ストレスも関係あるわよね。
そのとおり、ストレスも体質悪化に関係があります。社会的背景をみますと、産業構造の変化にともない仕事の質が大きく変わり、仕事に従事する時間が増えました。仕事をこなすスピードの速さが求められるようになりました。通信技術の発達により、四六時中、仕事と背中合わせに暮らすようになってしまいました。パソコンなどの機械と向き合う業務が増えました。人間味の薄い職場での疎外感を感じることも多いでしょう。職場や家庭での人間関係にいらだち、不透明な時代のなかで自分自身の将来設計に不安を感じてしまいます。そしてそのような不安や緊張、いらいらなどのストレスは、精神面だけでなく肉体へも影響を与え、体質を悪化させていきます。
|
 |
以上のように、ここ50年間に大きく変化した生活環境のなかに、15万年前と変わらない身体構造をした私たちが暮らしているのですから、その結果、私たちの体質は変わるわけです。いいほうに変わってくれればいいのですが、残念ながら、過剰な物質に囲まれた便利で楽な生活は、体質をわるくしていきます。
体質といえば、虚弱体質、特異体質など、もともとは生まれながらのからだの性質を意味します。しかし体質は、生まれてからも変化します。たとえば、ある年から急に花粉症になったり、アトピー体質になったりします。
私たちのからだは、環境変化に対して、ある程度は柔軟に対応できます。しかし急激な変化や大きな変動に対しては、じゅうぶんに対応しきれません。その結果、体質が変化して体調をくずし、慢性的な病気にかかることになります。
――漢方ではどのように考えるのかしら。
漢方の視点からみると、体質の変化には三つの要因が深く関与しているのがわかります。 一つ目は、「気」や「血(けつ)」の流れと量の問題です。からだのなかの生命力や栄養の状態はどうなっているか、ということです。これらが適量あり、しかもそれが体内をサラサラと流れているとき、体質は安定しており、病気にはなりません。それが環境や生活習慣の変化によって損なわれると体質が悪化し、慢性的な病気になりやすくなります。こういうときは、漢方道の必殺技@「補う」、A「捨てる」、B「サラサラ流す」をつかって体質改善をすすめるわけです。
二つ目は、臓腑機能の低下です。食べすぎや飲みすぎは胃腸に負担となります。あるいは塩分のとりすぎは腎臓によくないなど、臓腑に負担をかける要因は多々あります。そのようなことが長く続けば、当然、内臓の機能が低下します。上記の気血の流れがわるくなっても臓腑機能は弱くなります。
三つ目は、バランスの失調です。からだはひとつの有機体です。その中で、ある部分の機能が低下すると、からだ全体のバランスがおかしくなり、結果として免疫力が落ちたり老化がすすんだりします。心とからだのバランスも大事です。たとえばストレスで疲れ果てた精神は、身体に対して悪影響をおよぼし、不定愁訴や体調の悪化を引き起こします。
これら二つ目、三つ目の場合には、漢方道の必殺技C「バランスを整える」作用の強い漢方薬で体質を改善します。
――漢方薬を飲む以外に、日常で注意することは?
上記のように、体質を悪化させる要因は、日常生活のなかにちりばめられています。私たちが当たり前と思っている環境や生活習慣が、じつは15万年前と変わらない身体構造をしている私たちには大きな負担となっています。豊かさや利便性を享受できることはありがたいことですが、そこに安住していると体質がじわじわと悪化していくのです。
慢性病の根本的な原因は、体質の悪化にあります。慢性病は体質が生む病気です。そして肌の老化や肌荒れ、乾燥肌、脂性肌などの慢性的な症状も、同じです。
私たちはついつい楽な生活に流されがちです。みずからが病気になって苦しみ、つらい思いをしてからでないと、食事などの生活習慣に気をつかうようにならない、ということもあります。精神的なもろさは、私たちの弱点です。
それでも、日常生活でちょっと気をつけるだけで体質悪化を防ぐことも可能です。少しずつ、小さな努力を続けていれば、大きな体質の悪化を防止できます。
――たとえばどんなことかしら。
それは毎日の食生活をはじめとする習慣のなかにたくさんあります。具体的のどのようなことに気をつければいいのかは、次の機会にお話します。
|
 |
「短期間少食法」のメリットは、以下のような点です。
・二週間だけ、と期限つきなので続けられる
・二週間のあいだにからだの機能が回復する
・もとの食生活に逆戻りしにくい
・リバウンドが少ない
また、効果としては、以下のようなことがあげられます。
・「ため込みやすい体質」の改善、つまり漢方の必殺技A「捨てる」
・「流れがわるい体質」の改善、つまり漢方の必殺技B「サラサラ流す」
・老化防止
|
★ 漢方道・四つの必殺技 ★
|
- 「補う」
足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
- 「捨てる」
体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
- 「サラサラ流す」
漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
- 「バランスを整える」
内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。
● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●
『豚肉とネギの黒酢和え 』
材料(2人分):
豚バラ肉薄切り 100g
ネギ 1本 (2センチに切る)
黒酢 大さじ2
しょうゆ 大さじ1
片栗粉 適宜
サラダ油 適宜
作り方:
@ 豚肉を1枚ずつ広げて、両面に片栗粉をまんべんなく押し付ける。
A サラダ油でネギを素揚げして取り出す。
B @の豚肉をこんがりと揚げる。
C 黒酢としょうゆを合わせ、AのネギとBの豚肉を熱いうちに和える。
●黒酢は、陶器のつぼの中に玄米と麹、水を仕込み、屋外で一年以上かけてゆっくり自然発酵させてつくる酢。アミノ酸も多く、おいしい!
(2005年7月号)
|