薬石花房 幸福薬局
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たとえば骨を丈夫にしたい場合を考えてみます。

骨はおもにカルシウムでできています。カルシウムは、ずっと骨の中でじっとかたまっているのではなく、たえず溶け出したり、新しく形成されたりしています。

骨を丈夫にする方法としては、おもにカルシウムを補給する方法と、骨を形成する機能を高める方法とがあります。

西洋医学や栄養学では、前者つまりカルシウムの補給を考えます。医薬品もありますし、サプリメントもあります。

一方、漢方の場合は、後者つまり骨をつくる機能を向上させることを考えます。腸管でのカルシウムの吸収を高めたり、骨形成の機能を活発にさせたりします。つまりからだ全体のバランスをみて、バランスのわるいところを調整します。そしてカルシウムを骨に取り込む力を高めることにより、丈夫な骨を維持します。

うちにミシシッピアカミミガメがいます。いわゆるミドリガメです。秋が深まり水温が下がると、亀の体温も下がります。すると亀のからだの機能は低下し、まもなく冬眠に入ります。こういう状態では、いつもは餌を探し歩く亀も元気がなく、目を開けてじっとしている目の前に餌をおいても食べようとしません。

これと同じようなことが、骨についても起こっています。十分なカルシウムを摂取しても、カルシウムを骨に取り込もうとする機能が弱っていては、骨は丈夫になりません。カルシウムは体内を素通りするだけで、無駄になります。

成分だけをみて、足りない栄養を補うのが西洋の考え方、それに対して、衰えたり弱ったりしている部分の機能を高めることにより全体のバランスを整えるのが漢方の考え方です。これが漢方道の必殺技C「バランスを整える」です。

骨の例で説明しましたが、この漢方の考え方や改善法は、骨に対してだけでなく、皮膚に対しても内臓に対しても、目や耳に対しても、共通です。からだ全体のバランスを整えて、心身の不調を改善していきます。

バランスといっても、内臓ひとつひとつのバランスをみるのではありません。からだの機能を大きく五つに分けて、その五つのバランスをみます。

漢方の特徴のひとつに、からだ全体をひとつの有機体とみる、という考えがあります。人体を、脳、肺、心臓、胃、腸、手足、……と分解してその集合体としてとらえるのではなく、それぞれが密接に有機的に関連しあって、ひとつの人体ができあがっている、と考えます。

この基本となるのが臓腑の考え方です。

中国には古代から、さまざまな事物をバランス感覚でとらえる考え方がありました。そのひとつが五行論です。これは万物を木(もく)・火(か)・土(ど)・金(ごん)・水(すい)という五要素に分類して、個々の性質や相互の関係で全体をを把握する考え方です。

木は樹木のように上へ外へと伸びやかに広がる性質のもの、そして火は炎のように燃えて上がる性質のものです。土は大地のように万物を生み出す特質のものです。そして金は金属のように重く沈み変形しやすいもの、水は水のように冷たくて下に向かって流れ潤すものをさします。

相互の関係としては、互いに助け合う相生の関係と、互いにけん制しあう相克の関係とがあります。相生の関係とは、たとえば木が豊富にあれば火が盛んに燃え上がる、水がじゅうぶんあれば木が元気よく育つ、というふうに、相手の機能を高めるような関係です。

一方、相克は、木がどんどん生長すると土の養分が失われて土壌の質がわるくなる、あるいは、水をかけられると、燃え盛る火も弱くなる、などの関係です。相手の機能を抑制してしまいます。

五行の五要素は、それぞれが相生、相克の相手をもっており、絶対に強いとか、どの要素にも負けるとかいうものはありません。まさに相互作用で全体のバランスをとっています。それぞれの要素がお互いに協調しあって機能しているとき、諸事は穏やかに平和に順調に流れます。

古人はこのバランス感覚を、人体に対しても当てはめました。人の持つ生命力や内臓機能、精神と肉体との相互作用などを五行論に当てはめ、内臓相互の関連性や心身の相関関係などを確証していきました。これが五臓です。
木・火・土・金・水に対応させて、五臓には肝・心・脾・肺・腎があります。内臓の名前と似ていますが、内臓ではなく機能を現します。

肝には自律神経などの機能が、心には循環器系の機能があてはまります。脾には消化器系の、肺には呼吸器系の機能がおもに対応します。腎には内分泌系や生殖器系の機能があてはまります。

こうして、人体をひとつの統一体ととらえて病気の根本治療を進める中国医学ができあがりました。脳が一番大切とか、肉体が丈夫であればいいとかではなく、からだ全体がバランスよく協調しあっている状態が理想です。

なお五臓六腑の六腑は胃、小腸、大腸、胆、膀胱、三焦の六つをさします。三焦は、気や水分の通路の概念です。六腑は、おもに飲食物の通路を意味します。

――臓腑とお肌はどういう関係にあるのかしら。

五行論は古い時代つまりレントゲンも血液検査も尿検査もない時代に発達し、進化していきました。頼りになったのは、患者自身の自覚症状や、その肌の状態です。それらを頼りに、目に見えない体内の内臓の状態を把握していきました。

たとえば肝の状態がよくないと、肌が黒っぽく青くなり、爪がもろく割れやすくなります。心(しん)の状態がわるいと、顔色がくすみ、まだらになることもあります。脾が弱っているときには黄色っぽい肌になり、肺の機能が弱ると皮膚の新陳代謝が衰えて皮膚の病気にかかりやすくなります。腎機能が衰えると、肌の光沢がなくなり、やつれたような顔になり、白髪や抜け毛が増えます。

内蔵の機能が衰えると、皮膚に変化が現れてくるのです。それを見逃さないことが大切です。

逆もいえます。肌の不調は、内臓がつらい思いをしていることの表現です。機能が落ちている内臓を立て直すことにより、肌の調子を整えます。これが、美容漢方です。

漢方は、ひとりひとりの生命力を重視し、人体をひとつの有機体としてとらえます。生命力を重視することは、気・血・津液の概念と深い関係にあります。詳しくは、前回お話しました。

そして、人体をひとつの有機体としてとらえる考えと関連が深いのが、今回お話した臓腑の概念です。胃、肝臓、腎臓などとばらばらに思える内臓は、実は機能的につながっている、そしてお互いに相生、相克の関係で、機能を促進したり抑制したりしている、そういう関係です。肌の状態も、内臓の調子と深い関係にあります。

からだは機能的に臓腑に分かれ、そのそれぞれに気血や津液が流れています。五臓のそれぞれにおいて、気・血・津液が豊かにさらさらと流れているのが、理想的な状態です。

――その理想的な状態をくずしていくのは何かしら……。

次回はそのあたりの話しをします。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『れんこん蒸し 』

材料(2人分):
レンコン(すりおろして軽く水気を切ったもの)1カップ
ユリ根(さっとゆでたもの)20片
ギンナン(水煮)20個
エビ 3〜4尾

作り方:
1.レンコンはすりおろし、水気を軽く切って分量を用意する。
2.エビは殻と背わたをとり、包丁でたたいて細かくする。
3.材料をすべて混ぜ、陶器の鉢などに盛り、蒸気の立った蒸し器に入れて、レンコンが透明になるまで20分程度蒸す。(一人分ずつ小分けにして蒸してもよい。)
4.からし醤油、麺つゆなど、好みの調味料でいただく。麺つゆを煮立て、水溶き片栗粉を入れてとろみをつけたあんを掛けてもおいしい。

●レンコン、ユリ根、ギンナンと呼吸器系にやさしい食材で、のどに元気を!

(2005年5月号)


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