薬石花房 幸福薬局
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アトピー性皮膚炎による皮膚のかゆみや炎症というのは、病気の「症状」です。根本的な「原因」が別にあって、その結果として炎症やかゆみなどの「症状」が現れています。

症状を抑える作用の強い薬の代表は、ステロイド外用薬です。漢方薬は、症状を抑える力はそれに及びませんが、アトピー性皮膚炎の「原因」を改善する作用があります。

かゆみや炎症の「原因」は、たとえば肌が乾燥しやすい体質、あるいは皮膚が敏感な体質、などです。これらが、病気の根本的な「原因」です。そして、これらの体質が改善されない限り、病気の原因は存在し続けます。その結果、症状としての炎症やかゆみは、症状を抑える薬でいくら一時的に抑えても、再発を繰り返します。

アトピー性皮膚炎の根本的な改善には、「引き金」の除去も欠かせません。ハウスダストやダニ、乾燥、汗、いらいら、過度の飲酒など、皮膚炎を悪化させる要因はたくさんあります。それらは、アトピー性皮膚炎の根本原因ではなく、アトピーの症状を悪化させる「引き金」です。体質改善を早くすすめ、症状の悪化を最小限に抑える、そのために必要なのが、この「引き金」の除去です。

以上のように、アトピー性皮膚炎の根本的な改善のためには、次の三つの角度が必要です。
(1)かゆみや炎症などの「症状」を緩和する
(2)アトピー体質という根本「原因」を治療する
(3)症状を悪化させる「引き金」を除去する

詳しくは前回お話しました。

――アトピー性皮膚炎の根本原因には、どのようなものがあるのかしら。

ひとことで根本原因といっても、複雑なものです。しかも発病の引き金とも関連しあっており、なかなか一筋縄ではいきません。
アトピー性皮膚炎には、単純にこれが原因、というものがなく、多くの要因がからみ合っています。アトピーにあれが効いた、これが効いた、という単純な話は、不自然です。

世の中には、これがアトピーに効く、という宣伝や情報が流れています。なかには良心的なものもあるでしょうが、無責任なものも少なくありません。何をやっても効果がないようなときにはいろいろなことを試したくなりますし、試すこと自体は決してわるいことではありませんが、そこを逆手にとって一時的な利益を得ようとする人たちもいます。根も葉もない情報に左右されるのは、時間や労力、資金の浪費になりかねません。

アトピー性皮膚炎の根本にあるアトピー体質には、過去と現在の、生活習慣や環境も関与しています。それらひとつひとつを受けとめて、なにをしていくかを考える、そういう生き方が大切になります。さまざまなことが関連しあって今の自分、今の病気がある、そういう認識が必要です。

たとえば清涼飲料やコーヒー、動物性油脂、牛乳などは、とりすぎると消化吸収機能を乱し、ひいては免疫系を混乱させるものです。
おいしいものに囲まれて便利で楽な生活をすることは、わるいことではありません。しかしそのような生活を続けていれば心身にアンバランスや異常が生じかねません。

わかりやすい因果関係だけにとらわれず、過去や現在の環境やできごとを素直に受けとめて生きることは、縁を大切にした生き方といえます。いまの自分は多くの人の存在やさまざまな環境とのご縁によってできあがっているのだという感謝の気持ちや許しの思いを、病気に対しても持つことが大事です。

漢方は、アトピー体質そのものを改善していこうとするものです。たとえば仕事のストレスでアトピーが悪化するから仕事を変えるとかやめるとか、そういう「引き金」の除去もひとつの方法ですが、そればかりでは現実的な根本対策とはいえません。むしろ、同じ環境で仕事や生活をしてもアトピーが悪化しにくくなる、つまりアトピー体質そのものを改善していくのが漢方です。

――そうか、体質改善すればいいだけなのね。

ただし体質改善は、そう簡単にはできません。アトピー体質やアレルギー体質が数週間、数カ月という短い期間で改善できるとは思えません。しかも、だれもが百パーセント体質改善できるような、夢の薬があるわけでもありません。自分にあった漢方薬に加えて、生活習慣と意識の改革をすることが最低限必要です。

19歳の女性は、子どものころからのアトピー性皮膚炎です。ステロイド外用薬などで治療をしてきましたが、完全に治ったことはなく、症状を抑えては再発というパターンを繰り返しています。

もともと色白のようですが、現在は顔色が全体に薄赤くなっており、やや乾燥しています。首の皮膚も敏感で、体調がわるいときには皮膚が厚く硬くなり、しわに沿って出血したりじくじくしたりします。色は赤黒い感じです。からだにはそんなに出ませんが、ひじやひざの内側は、子どものころからアトピーがよく出ていたせいか、暗褐色に色素沈着して、皮膚がごわごわしています。かゆみは昔ほどではありませんが、やはり夜はかゆいらしくて、寝ているあいだにかいていることもあります。

アトピー以外には、疲れやすく、おなかをこわしやすく、よく下痢をします。寒がりで冷え症です。

この方の場合は、内臓とくに消化器系の不調が根本にあります。胃腸の機能がよくないために体液の流れに不調が生じ、皮膚炎を悪化させています。免疫力の低下にもつながっています。

このような場合は、白朮、白扁豆、山薬、西洋参、茯苓皮などの生薬を使って胃腸機能を補い(必殺技1)、根本「原因」から改善していきます。

30歳の女性は、全身にアトピー性皮膚炎が広がっています。腕を見ると、手のひらはふつうですが、手の甲や、手首から身体側の皮膚は浅黒く、ごわごわしています。さわるとざらざらと硬くなっています。首も同じような状態です。顔はそれほどではないようですが、それでも色はやや赤黒く、乾燥しています。

ステロイド剤を使えば一時的によくなるのですが、現在は保湿剤のみを使っています。

アトピー以外には、口が渇く、便秘などの症状があります。便秘は、便が硬くなるタイプです。くちびるも乾燥しやすいようです。
この方は、からだが乾燥しやすい体質が、アトピー性皮膚炎の根本「原因」です。乾燥して敏感になった皮膚が、症状を悪化させます。口の渇きや便秘なども、乾燥しやすい体質からきている症状です。

こういう場合は身体を潤す(必殺技1)ことにより乾燥しやすい体質を改善し、アトピーを改善していきます。熟地黄や生地黄、鼈甲、当帰などの生薬が有効です。もし水分が少なくて熱がこもるような状態の場合は、黄柏や石膏、水牛角などを少量、一緒につかう場合もあります。

注意しなければいけないのは、乾燥しやすいからといって水分を無理してたくさん飲んでも意味がないということです。飲んだ水がそのまま皮膚に届くことはありません。乾燥した皮膚に水分を運ぶ力のある漢方生薬が効果的です。

小康状態にあったアトピー性皮膚炎が、受験期や仕事の多忙期に悪化することもよくみられます。ストレスが引き金となって悪化する病気は数ありますが、アトピー性皮膚炎もそのひとつです。

漢方では、こういう場合はストレスに対する抵抗性を上げるような処方を考えます。一般には「気」の流れの停滞を取り除き、気をさらさら流す(必殺技3)生薬の、香附子や白芍などが使われます。同時にや土茯苓などが使われることもあります。

――アトピーに効く生薬もいろいろあるのね。

アトピー性皮膚炎は、漢方でも西洋医学でも治療がむずかしい病気です。今回紹介した生薬は、ここで示した症例において奏功した生薬です。どのようなアトピー性皮膚炎の人にでも同じ生薬が効くものではありません。合わない人が服用すると症状が悪化する可能性もあります。あの人が効いたから私も同じもので、とはいきません。漢方を服用する場合は専門家に相談するようにしてください。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『豚肉・リンゴ・ユリ根の炒め物 』

材料(2人分):
豚ロース肉塊(又はソテー用) 80g(1センチ角に切る)
リンゴ 1個 (1センチ角に切る)
ユリ根 100g (1枚ずつはがす)
蜂蜜 小さじ1杯
醤油 小さじ2杯
酢 小さじ1杯
塩、コショウ 少々

作り方:
1.軽く塩、コショウした豚肉をフライパンに入れて中火で熱し、油が出たら(油が足りなければサラダ油少々を補う)リンゴ、ユリ根を加え、 全体に中まで火が通ってこんがりと焼けるまで、時々かきまぜながらじっくりと炒める。 2.蜂蜜・醤油・酢を合わせ、@に掛けまわし、からませるように一炒めする。
ユリ根が残っていたら粗みじん切りにして炒め、ご飯・塩・ターメリックを加えてユリ根入りターメリックライスを作り、上の炒め物に添えるとよい。

●乾燥した肌には、豚肉、りんご、ゆり根などの食材で肌に栄養と水分を補って!

(2005年2月号)


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