薬石花房 幸福薬局
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19. 漢方的スローライフへの布石
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36. 美肌と体質
37. 肌のトラブルと体質
38. 膀胱炎
アトピー性皮膚炎に悩む26歳のOLがいました。子どものころ、ひじやひざの内側がかゆくただれていましたが、小学校から高校の後半までは、まったく症状がでず、順調でした。

しかし高校3年の受験勉強の時期になって急にアトピー性皮膚炎が再発しました。大学に入学してから症状は軽くなりましたが、軽度のかゆみと炎症は続きました。しかし、また就職活動とともに症状が悪化しました。顔や首の皮膚がかさかさに乾燥してただれ、色も赤くなり、それをめだたなくするためにステロイドの軟膏をぬる毎日が続きました。小さいころから胃が弱いほうでしたが、就職前後は胃の痛みも頻繁に感じていました。

就職後は、職場の空調による乾燥や、人間関係による緊張のせいもあり、症状はあまり軽快しないままです。

現在は首や腕とくに手首周辺の皮膚が硬くなり、皮膚がぽろぽろと、はがれやすい状態です。お風呂上りや寝るまえ、お酒を飲んだとき、疲れのたまったときなどには、強いかゆみもあります。しわにそって出血もみられます。顔もふくめて色はやや赤黒く、とても気になります。

ストレスが原因で病気になることや病気が悪化することは、よくあります。胃・十二指腸潰瘍の7割は精神的なストレスが原因ともいわれます。不眠症、うつ病、生理不順、アトピー性皮膚炎など、ストレスと関係する病気は多々あります。

冒頭の女性のアトピー性皮膚炎も、明らかにストレスが原因です。こういう場合は、ストレスに対する抵抗性を高めるような漢方薬を処方し、ストレスに強い体質を作っていきます。

――漢方薬を飲むだけでストレスがなくなるなんて、便利だわ。

いえ、そうではありません。ストレスがなくなるのではありません。社会生活を営む以上、ストレスはあります。ストレスが、よしがんばるぞ、というプラスのばねになってくれることもあります。ストレスの存在が悪いのではありません。

ポイントは、ストレスを感じたとき、それがいとも簡単に体調を悪化させる原因になってしまうことです。多少のストレスでも平気な人もいますし、逆にちょっとしたストレスでも胃が痛んだり、皮膚の状態が悪化したり、喘息が起こったり、生理がくるったりする人もいます。つまり、ストレスの波がきても、それが体調の悪化にすぐつながらないような体質にすればいいのです。漢方薬には、そのようにストレスに対する抵抗性を高める作用があるのです。

先の女性の場合、具体的には、まずストレスは「気」の流れの停滞と関係が深いので、気をさらさら流す(漢方道の(必殺技3))作用の強い生薬の香附子、紫蘇葉などをつかいます。そしてそれに、皮膚の乾燥に対して水分を補う(必殺技1)生地黄や玉竹、亀板を加えます。さらに胃腸内の余分な水分を捨てて(必殺技2)消化機能を高める生薬の茯苓や蒼朮も加味しました。漢方を飲み始めて半年くらいは効果があまり感じられませんでしたが、その後、にわかに皮膚の炎症やかゆみがなくなっていき、1年後には肌はすっかりきれ いになり、ステロイドも漢方薬も不要になりました。

――水分を補う生薬と水分を減らす生薬を一緒に煎じて飲んだりして、効果は下がらないのかしら。

生薬には不思議な力があり、水分が足りないところでは水分を補ってくれるし、水分が過剰に存在するところではそれを排泄してくれます。化学合成品では、こうはいかないでしょう。人体という有機的な生命体には、大自然の恵みである漢方生薬がやさしくしっかり効いてくれます。

怒りや不安などの感情が喘息の発作の引き金になるという報告があります。阪神・淡路大震災において被害が大きかった人ほどアトピー性皮膚炎の症状が、より悪化する傾向がみられたとの報告もあります。いらいらや悩みなどの要因が胃・十二指腸潰瘍や潰瘍性大腸炎、がんなどを誘引し悪化させることもわかっています。ストレスによる緊張状態になると各種のステロイドホルモンが分泌され、成長ホルモンや性ホルモンの分泌が抑えられ、免疫力が弱められることもわかっています。感情やストレス、暗示、緊張などの心の状態と、からだの調子とは、密接につながっているのです。

漢方では、この心とからだの関係を古来より重視してきました。これを「心身一如」といいます。漢方の基本のひとつです。

心は人間の感情や精神活動です。そして心には意識と無意識の領域があります。意識の領域とは、自分で考え、判断し、創造する部分です。無意識の領域とは、喜怒哀楽を感じたり、音や光を認識したりする部分です。無意識の役割は受動的ですが、環境変化に適応したり、人間の恒常性を維持したりする重要な部分です。無意識は、身のまわりの環境や、その変化に対して自分がどのように対処していくかをつかさどっています。

この無意識の領域に働きかける力が、漢方にはあります。ですから漢方は目に見える病気の、その奥にある体調の悪化や生命力の低下など、根本原因の改善に有効なのです。

現在の慢性病の底流には、働きすぎや生活の不摂生による「生命力の使いすぎ」と、緊張や悩みなどの精神的ストレスによる「心身バランスの失調」とがあります。このふたつの改善、つまり「生命力の向上」と「心身バランスの調整」が、じつは漢方の得意とする分野です。だから、慢性的な病気に対して漢方が効果を現すことが多いのです。

ストレス抵抗性を高めるのに重要な役割を果たすのは、五臓六腑の中の肝と腎です。肝は精神活動と関連が深く、情緒や精神状態を安定にたもつ働きが強い臓腑です。体内での気の流れを調整し、気を五臓六腑にめぐらせます。硬く緊張した心とからだを柔らかくほぐします。肝は、精神的ストレスから私たちの身を守ってくれています。

もうひとつ、大切なのは腎です。腎は肝とともに、人体への刺激に対する緩衝液のような働きをしています。環境の変化やストレスの来襲に対して、私たち人間の心身が過敏に反応しすぎるのをやわらげてくれます。豊かな水をたたえる深い湖に小石を投げ入れても、それは小さな波紋を少し広げるだけで、やがて水底の泥に吸い込まれます。それが大きな石であっても、遠くかなたの湖の対岸では、その投石の影響はほとんどないでしょう。しかしそれがもし庭の小さな池だとすると、池全体の水面が荒立ち、水が飛び散りあふれ、そこに住む鯉たちも驚いて跳ねまわることになります。

人のからだには、その湖のような機能が備わっています。多少の刺激や困難をやさしく受け入れてくれる機能です。これを調整しているのが、腎です。

ストレスは、自律神経系、ホルモン内分泌系、免疫系を乱します。不安やいらいら、悩みや悲しみは、検査では見えてこないところで水面を波立たせます。このようなとき、心身を柔らかくしてくれる肝、あるいは豊かな水量の湖を用意してくれる腎、これらを整備してくれる漢方薬の存在が頼もしくなります。

ストレスの影響で体調をくずしたとき、西洋医学では、ストレスをためないように、と医者から言われます。職場など仕事上のストレスが大きいとき、その仕事をやめるなり変えるなりしないとだめだ、と言われることもあるでしょう。しかし、それができないから、ストレスが雪だるまのように大きくなって体調を壊しているのです。

漢方では、ストレスとの共存をめざします。ストレスは、社会生活を営む以上、あって当たり前です。私たち自身がストレスに強くなればいいのです。ストレス抵抗性をあげればいいわけです。そのために、肝の気を柔軟にして硬い心身をほぐし、また腎を補って大きな湖を用意します。

心配性、几帳面、短気、怒りっぽいなど、ストレスをためやすい性格は、それはそれで人がらであり、その人の持ち味です。それが過敏に体調に影響してこないようにすれば、ストレスで体調をくずすことも少なくなります。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『せりとハムのお好み焼き 』

材料(2人分):
せり1/2株 2センチの長さにザク切りにする
ロースハム薄切り 3枚(5ミリ角に切る)
白ごま 大さじ1
大根 30グラム(5ミリ角に切る)
卵 溶き卵1/2個分
小麦粉 大さじ3杯
塩 少々

作り方:
1.材料をすべてボールに混ぜ、様子を見ながら水を少しずつ加え、全体がまとまる程度に加減する。ゆるすぎる場合は小麦粉を少し足す。
2.熱したフライパンにごま油(分量外)を敷き、@のタネを流し、片面がカリッと焼けたら裏返し、両面をこんがりと焼いて火を通す。
3.皿にとり、醤油(分量外)と、オイスターソース(あれば)を上に塗る。

● 春の七草のひとつ、せりには、利尿作用や、お通じをつける作用もありますよ!

(2004年4月号)


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