薬石花房 幸福薬局
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38. 膀胱炎
28歳のオペレーターで、4年前から急に花粉症になった方がいました。仕事中でも水のようなうすい鼻水が鼻の中をつたって流れ出ることがあります。鼻水はいつも突然、出始めるので、気が気ではありません。ティッシュペーパーが手ばなせず、鼻のまわりは赤くかさついています。症状がひどいときは市販の鼻炎薬で症状を抑えますが、眠気がするし頭がぼうっとするし、鼻の奥やのどが乾いて不快です。

花粉症の体質のひとつに、体内に余分な水分がたまっているタイプ、というものがあります。その水分が、花粉の刺激によってあふれ出し、鼻水、くしゃみ、鼻粘膜のむくみなどの症状として現れてきます。

たとえば胸のあたりにバスタブがあるとイメージしてください。バスタブになみなみと張られた水が、余分な水分です。もしそこに水を入れすぎると、あるいはバスタブのサイズが小さいと、水がバスタブからあふれ出し、鼻水やくしゃみとなります。

水の量がバスタブに比べて少ないときには、多少その水の量が増えても、水があふれ出して鼻水が出る結果にはなりません。しかし、水がたっぷりと張られているバスタブに水が注がれれば、水がバスタブのふちを越え、突然、鼻水として出てきます。ある年から急に花粉症になる人が多いのは、このためです。

花粉症になりやすいのは、この体内のバスタブに水がたくさんたまっているか、あるいはバスタブのサイズが小さい人です。具体的には、清涼飲料や冷たい飲み物が好きな人、くだものが好きな人、お酒ならビール党、甘いもの好き、冷え症、胃腸の弱い人、下痢しやすい人などが、このタイプです。

この体内のバスタブは柔らかく、少しの刺激で広がったり狭まったりします。スギ花粉は、このバスタブを狭める主要な要因のひとつです。ハウスダストやダニ、また精神的なストレスや、からだの冷え、寒気などでもバスタブは小さくなります。

先の女性は、このタイプです。この場合は、まず漢方道の必殺技A「捨てる」作用の強い生薬をつかって体内の余分な水分を排泄します。バスタブにたまっている水を減らすわけです。半夏や路路通などの漢方生薬が適しています。そこに身体をあたためてバスタブを広くするための生薬、乾姜や白芍などの生薬も一緒に煎じて服用してもらいました。やや飲みにくい漢方薬でしたが、半年ほど続けて体質改善できました。次の年以降は、漢方薬を飲まなくても鼻水がつたい落ちることもなくなりました。

この体質の場合は、日常生活では水分や甘いものをとりすぎないようにし、体を冷やさないように注意すればいいでしょう。冷たい清涼飲料よりは温かいお茶、くだものや生野菜よりは温野菜です。

花粉症の症状が出ない時期にも気をゆるめずに、たとえば夏でも鼻水が出ないからと安心しないで、ジュースやスポーツドリンクをがぶがぶ飲むのは少し控えたほうがいいでしょう。

――ビールはお酒だから、いいのかな。

ビールはお酒といえどもアルコール分はおよそ5パーセント。残りの95パーセントは水、つまり飲む量のほとんどは水です。それをジョッキに2杯、3杯と飲むと、摂取する水はかなりの量になります。

水を取らないのはよくありませんが、取りすぎにも注意しましょう。

26歳の公務員の女性は、2年前から花粉症です。とにかく目がかゆいのが特徴で、ついつい目をかいてしまいます。目のまわりが赤くかさついてしまいます。くしゃみもよく出ます。多いのは朝ですが、仕事中も何発か続けて出ることがあります。目のかゆみとくしゃみの予感で顔がむずがゆく、そのことばかりが気になります。色白でやせがたで、もともとそれほど丈夫なほうではありませんが、この時期はとくに疲れます。手足の冷えも深刻です。集中力も散漫になりがちで憂うつです。

このようなタイプは、体力がやや少なく、栄養や水分がからだのすみずみにまでじゅうぶん行き渡らず、肌が乾燥しがちな人に多くみられます。漢方の五臓六腑でいうと、基礎的な体力や生命力の意味をふくむ「腎」の機能が弱いタイプです。外界の刺激に対して敏感に反応しやすいのが特徴です。

この方も、腎の弱い体質です。そのため、花粉の刺激にさらされると、目や鼻の粘膜が過敏に反応してしまい、くしゃみや目のかゆみが生じています。漢方では、白朮、茯苓、黄耆、太子参など、補う(必殺技1)力をもつ生薬を中心とした処方で体力や抵抗力をつけることにより、花粉症を根本的に改善していきます。

30歳のOLは、7、8年前からの花粉症です。鼻水やくしゃみも出ますが、ひどいのは鼻づまりです。就職してから症状が悪化しました。調子がいいときは左右どちらかの鼻が通りますが、両方つまっていることが多く、口呼吸をしてしまいます。とくに夜はほぼ完全につまっていて、口をあけたまま寝ているので、くちびるがかさかさになっています。乾燥でのどを痛めることもよくあります。鼻づまりのせいで頭が重く、集中力に欠け、憂うつな日々が続きます。ねばっこい鼻水がつまっているわけではありません。鼻の粘膜がふくらんで、鼻の穴をふさいでいる感じです。

じつは鼻づまりの原因のひとつに、精神的ストレスがあります。

――どうしてストレスで鼻がつまるのかしら。

やや専門的になりますが、健康な状態では、からだのなかを「気」がさらさらと流れています。しかし、そこにストレスや緊張がかかると、その気の流れが悪くなります。その結果、気や水分の流れがとどこおり、鼻がつまります。この現象は、季節の変わり目や気温の変化など、精神面以外の環境の変化によっても起こります。

この方の場合も、就職やその後の人事異動や人間関係にともなうストレスが負担になったようです。こういう場合は、気をさらさら流して(必殺技2)鼻のつまりを通す生薬、鬱金、香附子などに蒼耳子、辛夷、白、竜脳などを配合します。

鼻づまりは1ヵ月ほどでなくなりましたが、体質改善のためにさらに3ヶ月つづけて漢方薬を飲んでいただき、体調を整えました。

花粉症は、いまや日本に2000万人いるという、わが国を代表するアレルギーの病気です。毎年2月から4月にかけてはスギ花粉が猛威をふるい、そのあとはヒノキ、カモガヤやオオアワガエリ、秋にはブタクサやヨモギなどの花粉も飛散しています。北海道ではスギ花粉は少ないのですが、シラカンバの花粉が花粉症を引き起こすようです。

近年の花粉症患者の急激な増加に対し、スギ花粉が悪者のように扱われますが、スギ花粉は太古からこの時期に飛散していたわけですし、問題はむしろ私たち人間の体質の変化にもあると漢方では考えます。戦後の植林の影響でスギ花粉の飛散量が増加しているようですが、スギの植林地から都会に出てきて初めて花粉症になる人も多くいます。スギ花粉は、いわば引き金、ということになります。

幸福薬局での花粉症に対する漢方薬の有効性をまとめた論文が2002年に北京で開かれた国際学会「世界養生大会」で認められ、発表する機会がありました。内容は、体内に余分な水分がたまっているタイプの花粉症に対し、余剰水分の排泄と胃腸機能の改善のための漢方薬を服用し、満足のいく効果を得たというものです。漢方薬の服用と並行して、水分や甘いもののとりすぎに注意することも有効でした。

スギ花粉が飛散する時期のみ鼻水などの症状を錠剤や注射で抑えてすごす方法と、花粉症の体質そのものから改善していく漢方の方法、それぞれの特徴をよく理解して、できるだけ快適に、この時期を過ごすようにしてください。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『白菜と豚かたまり肉の蒸し煮 』

材料(2人分):
白菜1/4株 ザク切りにする。
豚ロース肉塊 300g程度 塩小さじ1/2をまぶしておく。

作り方:
1.厚手でフタのできる鍋を用意し、ザク切りの白菜と、豚肉(かたまりのまま)を入れる。白菜は最初に入りきらなければ、途中でかさが減ってから追加して入れる。
2.フタをして弱火にかけ、40分くらい気長にコトコト煮る。白菜から水分が出るので水やダシは加えなくてよい。
3.火を止め、豚肉を切り分け、白菜と一緒にポン酢やゆずこしょうなどをつけていただく。

● 冬に元気と滋味をためこむ白菜と豚肉で、良質の栄養を身につけましょう!

(2004年3月号)


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