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会計事務所で仕事をする30歳の女性の悩みは、吹き出物です。若いころから肌はきれいなほうでしたが、最近になって顔に吹き出物ができるようになりました。少し赤みのあるぷつぷつが、あごにたくさんできています。
――体質が変わったのかしら。
30歳はお肌の曲がり角、くらいに思っていましたが、よくよく考えてみると、最近、疲れやすくなったようにも思います。ぐっすり寝てもだるさが取れないし、仕事はきらいではありませんが集中力が落ちたように感じます。毎月の生理は安定しているのですが、生理期間が短くなったし、量も少なくなった気がします。食事のバランスには気をつけているのですが、顔のつやもなくなったように思います。
肌のトラブルの根本原因は、多くの場合、体内のバランスの失調や機能低下にあります。肌というものは、いつまでもからだの表面にあるわけではなく、意外と早いサイクルではがれ落ち、新しい肌が体の内側から出てきています。はがれ落ちるといっても、日焼けをしすぎたときのようにぺろりとむけるのではなく、目にみえない細かいあかとなって、少しずつ、はがれているのです。
さて問題は、生まれてくる新しい肌です。この肌がきれいであれば、素肌は美しいはずです。
新しい肌は、からだの中で作られます。その材料は、毎日の食事にあります。食べたものが消化され吸収され、血液に運ばれて皮膚の近くまでやってきます。そしてそれを使って新しい細胞が作られ、それが新しい肌になります。ということは、肌が作られる過程で大事なのは、食事の内容、胃腸の調子、血液の流れ、ということになります。
もし、脂肪が多く栄養バランスの悪いファーストフード、保存料や着色料などの食品添加物がたっぷり入ったお弁当、油のまわったスナック菓子などを毎日のように食べていると、どうなるでしょう。結果は明らか。それなりの肌になっていくのです。
さて先の女性の場合は、胃腸の機能低下が根本原因にあるようです。消化吸収する力が若いころより少しばかり弱くなり、その結果、肌にトラブルが出るようになりました。こういう場合は、漢方薬で胃腸機能を高めてあげるといいでしょう。たとえば漢方道の必殺技1「補う」生薬で胃腸機能を補います。人参、黄耆、白朮などの生薬が適しています。また甘草、膠飴、生姜などで胃腸機能を整えます。同時に何首烏や白芍などを用いて、新しい肌のための良質の栄養も補います。そして肌荒れに対しては「捨てる」(必殺技2)力の強い蒲公英、白鮮皮などの生薬を使って、吹き出物を消し去ります。
――胃腸が弱っている自覚症状はないんだけど……
胃が痛いとか、下痢をするとか、そういう症状がないからといって、胃腸が丈夫であることにはなりません。胃腸がずいぶん弱ってから、はじめて胃痛や下痢、胃炎、胃潰瘍などの症状が現れるのかもしれません。でも、その前に、たとえば肌の調子の変化から胃腸機能の低下を察知し、その機能を元にもどす、そして肌のトラブルも改善してしまう、そんなことが漢方にはできます。胃腸が弱って胃腸の病気になる前にそこのところを改善してしまう、こういう考え方で病気を予防し健康を維持できるのも、漢方という、人類の残した英知のすばらしさだと思います。
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胃腸の働きは、栄養分を吸収することだけではありません。漢方では、元気のもと、つまり「気」を飲食物から吸収することも、胃腸の機能のひとつとして重要視しています。
気は生命エネルギーともいえます。血液をさらさら流したり、体温を作ったり、ばい菌やウイルスを退治したり、消化吸収や代謝などの生命活動を進めたり、そのような生きていく上で必要な活動を行っているのが、気です。
気は、おもに胃腸で作られます。とくに色がついているわけではなく、また重さがあるわけでもなく、とにかく目にはみえないものですが、食事をすることにより、元気が出てきたり、活力がわいてきたり、体が温まったり、免疫力が高まったり、そんな役目を果たしてくれるものです。
気が足りないとどうなるでしょう。まず疲れやすくなります。だるさが取れにくくなります。血行も悪くなり、顔色がさえなくなります。冷え症になります。ばい菌やウイルスを退治する力も弱くなりますので、かぜを引きやすくなります。湿疹などの病気にもかかりやすくなります。にきびや吹き出物ができやすくなり、また治りにくくなります。
胃腸が弱ると気が不足しがちになり、さまざまな機能が衰え、肌の調子も悪くなる、ということです。胃腸が弱いと、胃痛、下痢、胃炎、胃潰瘍などの胃腸症状だけが現れる、という単純なものではありません。
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人間であるから仕方ないことですが、胃腸機能は年とともに少しずつ衰えます。
――むかしは脂っこいものでも平気だったのになあ。
それはそうです。若い肢体が必要とするエネルギーや栄養は、年をとってからの比ではありません。それなりに脂肪分も必要だったといえます。あなた方は、もう育ち盛りではありません。
それなのに若いころと同じような飲食を続けていると、どうなるでしょう。まず必要以上の食べものが胃袋に持ち込まれることにより、胃腸の負担が増えます。そしてそれがまた胃腸にとっては超過労働のようになり、胃腸はさらに疲れます。ついでに余分な栄養分は、皮下脂肪や内臓脂肪として、しっかり蓄えられます。
そうならないように、今の私たちにできることは、二つあります。それは、胃腸が衰えないようにいたわることと、今の内臓に適した食べ方をすることです。
まずは食べすぎ飲みすぎに注意すること。とくに高たんぱく高カロリーの食事は負担になるばかりです。私は肉がだいすき、という人は、量を減らすとか、回数を少なくするとか、工夫をするといいでしょう。そうしないと、気がつけば下腹にぜい肉がついていたり、また肌荒れをおこしやすくなっていたり、ということになりかねません。ぜい肉がついてきたのを年のせいにしないで、食生活や運動についても見直してみるといいでしょう。
胃腸機能が衰えないようにするには、ほかにもさまざまな対策があります。たとえば規則正しい生活。毎日おなじくらいの時間に起きて朝食をとり、昼食や夕食もだいたい同じ時刻に食べる、これだけでも胃腸にとっては心地よいはずです。さらに間食を減らすこと。
おやつをだらだらと食べていると、胃袋が休まるひまがありません。とくに寝る前に食べすぎると、あなたが寝ている間も胃腸が働き続けることになります。それでは胃腸が疲れて機能が衰えるのも無理はありません。ご参考までに、おとなになってからアレルギー体質になる人の少なからずは、食生活の乱れが原因になっています。胃腸の機能低下が、アレルギーの遠因になっているのです。
私たちのからだは機械ではありません。いろんなところが密接に関係しあっています。お肌と胃腸も、そうです。胃腸機能の低下により、肌が荒れることもよくあるのです。年齢とともに少しずつ弱くなる胃腸ではありますが、食習慣の不摂生が続いたりすると、さらに機能が衰えてしまい、その結果、肌荒れやアレルギーが引き起されることが多いのです。なんとなく心あたりのある人は、漢方で胃腸機能を回復しておくといいでしょう。あなたの体調の不良は、胃腸の疲れが原因になっているのかもしれません。
なお疲労倦怠感やにきび、肌荒れなどについては、拙著「漢方美人講座」(文藝春秋)の中で詳しく解説してあります。そちらも参考になさってください。
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★ 漢方道・四つの必殺技 ★
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- 「補う」
足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
- 「捨てる」
体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
- 「サラサラ流す」
漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
- 「バランスを整える」
内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。
● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●
『鶏の寒天寄せ 』
材料(2人分):
鶏肉モモ肉 1枚
生姜 スライスして2切れ
ネギ(青い部分でよい)10cm
酒1/2カップ
寒天 1/2本(水で戻す)(粉寒天なら水2カップ分)
アサツキ 少々(小口切り)
ポン酢 少々
作り方:
1.鶏肉に塩(小さじ1/2程度)をすりこみ、酒をかけて生姜とネギをのせ、厚手の鍋にひたひたの水少と一緒に入れ、蓋をして中火〜弱火で蒸し煮にする。蓋をしたまま蒸らす。
2.荒熱が取れたら生姜とネギを取り除き、鶏肉を取り出す。煮汁は漉し、一度冷蔵庫で冷やして表面の脂をきれいに取り除く。
3.(2)の煮汁2カップ(足りなければ水を足す)を火にかけ、寒天を入れてかき混ぜながら煮溶かす。
4.(2)の鶏を一口大に切り、流し缶に並べる。
5.(3)の煮汁を鶏の上に注ぎ込み、冷やし固める。
6.羊羹のように切り分け、アサツキとポン酢をかけていただく。
● 夏の終わりは疲れもたまり、胃腸の機能も弱りがち。胃腸にやさしく、しかも栄養バランスのいい食事で体調を整えましょう。
(2003年10月号)
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