薬石花房 幸福薬局
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太りすぎは美容の敵、でも、ついつい食べすぎてしまう、甘いものに手が伸びる、運動もあまりしていない、そういえば最後に運動 らしい運動をしたのは何ヵ月前、いや何年前かしら・・・。そして、ふと気がつけば、若いころの体型はどこへやら。
日本の肥満人口は年々増え続け、成人の約3割が肥満であるとの2001年の調査結果もあります。

ダイエット希望の30歳の女性がいました。現在、身長158センチ、体重58キロ。学生時代は体重が49キロでしたが、就職し てからじわじわと増え、いつの間にか58キロ。体重も気になりますが、下腹や下半身にぜい肉がついてきたのが一番の悩みです。 仕事での残業が多い関係で夕食の時間が遅くなります。また職場のストレスもあって、ついつい食べすぎてしまいます。朝は逆にあ わただしく、軽くパン食とくだもの程度で済ますことが多く、また昼は市販のお弁当を短時間で食べることの多い日々です。そして 甘いおやつが大好きです。
外食が多く栄養のバランスが悪いことや間食が好きなこと、それに運動不足であることなどが原因になっているとは自分でもわかっているのですが、なかなか思い切った生活習慣の改善ができないで今日に至っており、漢方で何とかしたいとのことです。

ところで本当に肥満の人が日本人に3割もいるのでしょうか。

一般に肥満度の指数に使われることが多いのは、BMIという数字。Body Mass Indexの略で、肥満指数と呼ばれています。体重(キロ)を身長(メートル)で2回割って算出します。たとえばわたしの場合は、身長170センチで体重63キロですので、63 ÷1.7÷1.7=22となり、肥満指数は22ということになります。
医学的には、日本人の場合、この肥満指数が25を超えると肥満、と判定される場合が多いようです。たとえば身長170センチの人ですと、逆算して体重が72キロを超えると肥満ということになります。先の統計も、この基準によるものです。

さて先ほどの女性の場合はどうでしょうか。身長が158センチで体重が現在58キロですので、肥満指数は23となります。医学的には肥満とはいえません。しかし当の本人にしてみれば、ぜい肉がついてきた、体が重だるい、などの悩みがあります。こういう場合、漢方ではどのような対応をしていくのでしょうか。

漢方ではダイエットのことを減肥といいます。余分な脂肪を減らす、という意味あいです。漢方では、何キロ以上が肥満で、それ以下は正常、という考え方をしません。その人が健康で体調がいい状態と比べて脂肪が余分についているようなら、その余分な脂肪を減らしていきましょう、と考えます。先の脂肪指数はもちろん価値のある重要な指標ですが、その判断基準では肥満でない人に対しても、余分な蓄積物を減らし、太りにくい体質作りを進めることができます。

漢方薬による肥満の改善は、太りやすい体質の改善に重点が置かれます。太りやすい体質というのは、多くの場合、五臓六腑の機能バランスの失調や、機能低下をともないます。
主なものとしては、まず消化器系の機能が低下して余分なものが体内に蓄積しやすい体質があります。疲れやすい人が多く、ぽっちゃりした感じの太りかたをしています。この場合は漢方道の必殺技 1.「補う」作用の強い生薬を用いて消化器系を立て直し、代謝機能を高めます。党参、白朮、黄耆、砂仁などの漢方生薬を用います。あるいは、気の流れが悪いために臓腑機能がうまく働かず、飲食物が体内に貯えられてしまう体質もあります。体が重だるく、ときに胸や脇がつかえる感じ、あるいは腹部の膨満感をともないます。この場合は漢方道の必殺技 3.「サラサラ流す」働きの強い生薬を用います。柴胡、白芍、木香、烏薬などの生薬が効果的です。そして体内にため込んでしまっている余分な脂肪に対しては、漢方道の必殺技 2.「捨てる」薬効のある生薬を活用して、体調を戻していきます。蒼朮、ライフクシ、神曲、半夏、陳皮、荷葉などの生薬があります。いずれも体質からの改善となりますので時間がかかる場合もありますが、リバウンドが少ないのが漢方の特徴です。

先の女性の場合は、年齢的に低下しはじめた内臓機能、とくに肝臓の代謝機能を霊芝や川玉金などの生薬を用いて高め、同時に枳殻や木香、厚朴などで気の流れを整えて余分なものを体内に蓄積しにくい体質を作りました。もちろん食生活の改善や腹式呼吸の習慣づけなど生活習慣の改善も同時に行ってもらい、半年で8キロ減量し、体重を50キロにまで戻しました。その後漢方薬の服用はやめてもらいましたが、体重のリバウンドは起こっていません。

なお漢方には、余分な脂肪を減らす働きはありますが、ちょうどいい状態からさらに脂肪を減らしてやせさせる働きはありません。漢方薬は常に体調をベストに近づけようとするものです。そのベストの状態からさらにやせたい、という場合には漢方薬は効きません。幸福薬局は場所がら、芸能関係やモデルのかたなどもいらっしゃいますが、中にはベストのプロポーションからさらにやせたい、というかたもいらっしゃいます。しかし漢方には不健康なまでに体重を減らすような作用はありません。どうしてもやせたいのなら、過激な食事制限など体によくない方法や、脂肪吸引術のような強制的な手段しかありませんね、とお話して、漢方薬を処方するのはお断りしています。

なお、○○減肥茶と銘打ったお茶がよく見かけられますが、どなたでも簡単にダイエットできるお茶や薬など、ありません。

ダイエットをして一時的に体重は減ったけれども、その後また元の体重に戻った、という経験をしたかたも多いと思います。ダイエットをしてはリバウンド、の繰り返しで体重が逆に増えてしまったかたもいるのではないでしょうか。

理由は、ダイエット法の落とし穴にあります。
一般に、簡単でしかも短期間に効果が現れるダイエット法には、次の二つの落とし穴が隠されています。

落とし穴(1):摂取する栄養分が急に減るために、体がみずから将来に備えて皮下脂肪をためようとする。

落とし穴(2):一時的に体がやせるために、基礎代謝の少ない体質に変化する。

つまり、いかにも簡単にできそうなダイエットは、ほとんどの場合、一時的に減量できますが、その間にあなたの体は上記のふたつの落とし穴にはまり、皮下脂肪をためやすく、そして基礎代謝の少ない体質に変化していくのです。ですから、そのようなダイエットのあとは、せっかくダイエットをしても、逆に太りやすい体質に変わってしまうのです。

よくあるのは単品ダイエット。りんごやこんにゃく、ゆで卵ばかりを食べてやせようというものです。一時的に体重が減ることはあるでしょうが、栄養のバランスが悪いために体が自ら脂肪をためこみやすい体に変身し、体脂肪率が増えてしまいます。したがってリバウンドしやすいのが特徴です。肌荒れやむくみの原因にもなります。
急激なダイエットもよくありません。1週間で3キロ、1ヵ月で10キロなどと体重が減ると、体の正常な機能に相当な負担がかかります。しかも体は少ない食事量に対応するために脂肪を蓄えるようになり、また少ない栄養で活動できるように基礎代謝を減らすようにもなります。ダイエットには逆効果です。おまけにホルモンバランスを失調させて生理不順や無月経を招いたり、肌の老化を早めたりと悪影響も出てきます。1ヵ月に1〜2キロ程度のペースで減量するのが、リバウンドや老化などの弊害の少ない方法でしょう。

前述のとおり、漢方では体質を改善してダイエットを進めます。ただし、漢方で無理なくダイエット、つまり体に無理な負担をかけることなくダイエットすることは可能ですが、らく楽してダイエット、というのはできません。漢方薬だけに頼るのではなく、生活習慣の見直しも同時に必要です。漢方を飲んでいるからと安心して食べすぎていては、せっかくの効果も現れません。

 摂取エネルギーが多くなりすぎないようにする−−とにかくゆっくり食べましょう。
私たちは実際におなかがいっぱいになってから20分ほどしてようやく満腹感を感じるようにできています。つまりその20分間に食べたものはすべて食べすぎということになります。ゆっくり食事をすれば食べすぎる心配も少なく、腹八分程度で満腹感を自然に感じるようになります。間食も控えめにするといいでしょう。

 体に皮下脂肪を貯めさせない−−食事量が急に減ると人間の体は脂肪を蓄積して飢餓に備えようとします。極端な食事制限はやめましょう。

 体に基礎代謝を下げさせない−−バランスよく適量を食べて筋肉や内臓を衰えさせないようにしましょう。
適度な運動も重要です。そして、もうひとつ、深い腹式呼吸も大切です。体内で脂肪を燃焼させるためには十分な酸素が必要ですから。

しかしそこまでしてダイエットしなくてもいいのではないか、という人もいるでしょう。ちょっと太ったくらいでは別に病気ともいえませんからね。でも太っていることは万病のもとです。肥満の人のほうが糖尿病にかかる確率は5倍、不妊症は3倍、胆石も3倍、高血圧は2.5倍、心臓病は2倍に増えるという統計もあります。将来の病気の予防のためにも、体重の自己管理をおこたらないようにしましょう。

なお3月に出版させていただいた「漢方美人講座」(文藝春秋)の中でも、ダイエットについてもう少し詳しく解説してあります。そちらも参考になさってください。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『鶏スープのレモングラス粥 』

材料(2人分):
鶏肉モモ肉かムネ肉 1枚
生姜 スライスして2-3切れ
米 1/2カップ
レモングラス(生) 15cmのもの5-6本
酒、オリーブ油、塩、少々

作り方:
1. 鶏肉に塩をすりこみ、酒をかけて生姜をのせ、厚手の鍋にひたひたの水少と一緒に入れ、蓋をして中火〜弱火で蒸し煮にする。蓋をしたまま蒸らす。
2. 荒熱が取れたら生姜を取り除き、鶏肉を取り出す。煮汁はできれば漉して、一度冷まして表面の脂を取り除く。
3. 煮汁に水を足して4カップにしておく。
4. 厚手の鍋にオリーブ油少々を熱し、米を炒める。
5. 米が透き通ったら�の煮汁とレモングラスを入れる。
6. 最初強火で煮立ったら弱火にし、コトコト煮てお粥にする。
7. できあがる直前にレモングラスを取り除き、塩で味を加減し、2の鶏肉を細く裂いて、好みの量だけ混ぜる。(残った鶏肉はサラダなどに使う)

●鶏肉は気を養い体に栄養を与えます。レモングラスのさわやかな香りと健胃作用で、おいしいお粥のできあがり。ダイエット中もバランスのよい食事を!

(2003年6月号)


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