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みなさん、ぐっすり眠っておられますか?
昼間のストレスや緊張を忘れ、わずらわしい人間関係から解放され、お化粧も落として目を閉じ、体の力をぬいて背中で地球の重力を感じる時間。この眠りの中で、疲れた細胞は癒され、老廃物は運び去られ、フレッシュな栄養が運び込まれ、私たちの細胞ひとつひとつがよみがえり、肌は若さを取りもどします。
もし眠っているあいだに昼間の疲れが取り除かれなかったら、乾燥肌はかさかさのまま、脂性の肌はますますてかてか、そして目の下のくまをくっきり残したまま翌朝を迎えることとなります。
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肌のくすみに悩む26歳のOLがいました。最近どうも疲れやすく、やる気や意欲もあまり出ません。顔色もぱっとせず、肌のくすみが気になります。一年をとおして肌のかさつきも気になっています。ただし鼻のまわりは脂っぽいです。
残業がそれほど多いわけではありませんがオフィスの人間関係などにストレスを感じており、そのせいか不眠ぎみです。夜、寝ようと思っても昼間のちょっとしたことが思い返されて目がさえ、なかなか寝つけません。いったん寝つくと夜中に何度も目を覚ますことはないのですが、眠りが浅いせいか、夢をよく見ます。そんな日は、朝、目覚めても疲れが残っており、ひどいときは目の下にくっきりとくまができています。
このかたの場合は、血行が悪く、また栄養状態がよくないために睡眠中に体の細胞が十分リフレッシュされていません。おまけにストレスが引き金となって眠りが浅くなっており、事態を悪化させています。
こういうときは漢方薬でまず血行を改善し、ストレスに極端に左右されない安定した精神状態を取りもどし、そして体内の栄養状態を改善して体の内側からお肌に潤いを与える仕組みをつくります。さらに漢方薬で夜ぐっすり眠れるリズムを取りもどし、お肌だけでなく体調そのものの改善を図ります。
具体的には、莪朮などサラサラ流す(漢方道の必殺技(3))働きのある漢方生薬を使って血行を改善し、青皮などバランスを整える(必殺技(4))生薬でストレスに対する抵抗性をあげ、酸棗仁や竜眼肉、柏子仁など補う(必殺技(1))働きの強い生薬で体内の栄養状態を改善していきます。酸棗仁や竜眼肉、柏子仁には、夜、深い睡眠に導く力もあります。さらに竜骨や牡蛎などバランスを整える(必殺技(4))生薬で自然な安定した眠りを取りもどすような処方にしました。
その他、参考までにあげておきますと、いらいらして寝つけないときは温胆湯や逍遥散、眠りが浅く夢をよくみる場合は天王補心丹や帰脾湯、焦燥感が強くて夜通し眠れないようなときは黄連阿膠湯、あれこれ考えてなかなか寝つけない場合は竜胆瀉肝湯などの処方が用いられます。これらの漢方薬は、一般に一日2回か3回服用、つまり朝も飲むことになりますが、睡眠薬ではありませんので飲んですぐ眠くなるのではなく、飲み続けるうちに体のバランスやリズムが整い、そのうち自然な眠りを夜に迎えることができるようになります。先の女性の場合も5カ月ほどで深い眠りを取りもどし、肌の調子も改善されていきました。
なお不眠のために病院で処方される睡眠薬を使う人もいると思いますが、睡眠薬には、翌朝への眠気の持ち越しや、健忘などの副作用があります。また薬物の連用による依存性や、量を増やさないと効かなくなってくる耐性なども表れます。適切に飲むのであれば心配はさほどいらないのでしょうが、病院の睡眠薬を飲む場合は十分注意して使ってください。
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眠りについて、もう少しみておきましょう。
不眠は、先の例のようにお肌の調子だけでなく、体力や精神面にもよくない影響を及ぼします。不眠に悩む人は意外と多く、昼間に居眠りをしてしまう症状なども含めると、睡眠障害に悩む人は五人に一人ともいわれています。
眠らなくても死ぬことはないといわれますが、眠れない当人にとっては眠りたいときに眠れないこと自体が大きなストレスです。昼間の集中力や思考力の低下など精神面への影響も気になります。細胞レベルでの老化が促進され、高血圧や糖尿病などの慢性的な病気が悪化する可能性があるという報告もあります。免疫機能も低下して、かぜをはじめさまざまな病気にかかりやすくもなります。
お肌だけでなく、一日の肉体疲労と精神疲労の回復には、すこやかな睡眠が不可欠といえるでしょう。
不眠の原因にまずあげられるのは精神的ストレスです。転勤や転職など大きな生活環境の変化だけでなく、仕事や家庭でのトラブルによる緊張や興奮、不安やいらいらなどが引き金となって、眠れない夜は容易に訪れてきます。みなさんも経験したことがあるでしょう。
もうひとつ、不規則な生活も不眠の原因となります。人間には体内時計のようなものがあり、昼と夜、つまり活動と休息の時間が周期的に繰り返されるようになっています。ところが夜更かしすることがたびたびあったり昼近くまで寝ている日がときどきあったりすると体内時計に狂いが生じ、寝て休むべき時間に目がさえたりします。日曜日に寝だめをしようと思ってたくさん寝ても、かえって頭がぼうっとしたり、逆に夜、眠りにくくなったりした経験をお持ちのかたも多いでしょう。
それ以外には仕事のし過ぎ、疲れ過ぎなどによって起こる自律神経系とくに交感神経の緊張が引き金となって眠りにくくなる場合や、ホルモンバランスの乱れ、あるいは神経症などの精神的な要因が関係してくる場合もあります。先の女性が服用した青皮、竜骨、牡蛎などの生薬は、とりわけ自律神経系のバランスを調整する(必殺技(4))働きの強いものでした。
漢方では睡眠を陰陽のバランスの中で大きくとらえています。一日の中で陽にあたる日中は精神活動が活発になり、意識も清明になります。一方、太陽が沈んで陰気が盛んになる夜は意識も落ち着き、穏やかになります。人の体はもともとこのようにできているのです。
実際に不眠の人をみると、夜なのに陽気が必要以上に盛んであったり、日中の陽気を夜間まで引きずりこんでいたりということがよく見られます。こういう場合に漢方薬で夜間の過剰な陽気をしずめたり、陰気の不足を補ったりして陰陽のバランスを整え、自然な睡眠が得られるように向かわせるのが漢方です。たとえば先の例では、酸棗仁や竜眼肉などは夜間の陰気を補う(必殺技(1))働きの強い生薬でした。
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日常生活においては、(1)ストレスをためない工夫、(2)心身をリラックスさせる工夫、(3)生活のリズムを作る工夫の三つが大切です。
まず(2)ストレスをためないためには、趣味の時間の充実や運動、週末の気分転換などに積極的に取り組むといいでしょう。また食事もできるだけゆっくりと楽しく食べ、偏食せずにバランスよく食べるようにしましょう。脂っこいものばかり食べていると気のめぐりが悪くなり、ストレスに対する抵抗性が下がります。
(3)心身をリラックスさせるためには、ぬるめのお風呂に入ったり、アロマテラピーを活用したり、心を落ち着かせる音楽を聴いたりするのもいいでしょう。
そして(3)生活のリズムを作るためには、起床時刻を一定にするのが一番です。仕事のない日曜日でも、寝る時間が遅かった翌朝でも、いつもの時刻にいったん起きるのがコツです。
最後に睡眠時無呼吸症候群についても触れておきましょう。これは睡眠中に断続的に無呼吸を繰り返す症状で、そのせいで睡眠中に十分な休養がとれず、日中ぼうっとしたり眠くなったりします。いびきをかくのが特徴です。太った人によくみられます。身長169cm、体重85kgの男性で脂肪肝、高血圧、高脂血症で睡眠時無呼吸症候群という人が、漢方薬を約10カ月服用して体重を落とし、すべての症状から回復した例もあります。昼間の眠気もなくなりました。不眠ではありませんが十分な睡眠効果が得られない症状を漢方薬で回復させた一例です。
睡眠時間は人それぞれです。大人は一日何時間の睡眠が必要、というものはありません。睡眠薬に頼り続けることなく、あせらずに自然な睡眠を取りもどしてください。
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★ 漢方道・四つの必殺技 ★
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- 「補う」
足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
- 「捨てる」
体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
- 「サラサラ流す」
漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
- 「バランスを整える」
内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。
● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●
『鶏手羽肉とセロリのスープ 』
材料(2人分):
鶏手羽肉 6本
ねぎ 1/2本(2〜3cmのぶつ切り)
セロリ 1/2本(2〜3cmのぶつ切り)
しょうが 1かけ(うす切り)
大棗(なつめ) 10個
塩 少々
酒 50cc
作り方:
1. 鍋に材料すべてと酒と水約1.5リットルを入れ、火にかける。
2. 沸騰したらアクをすくい、弱火にしてことこと煮る。
3. 材料がやわらかくなったら塩で味を調える。
●大棗は本文で紹介した酸棗仁と同じ仲間で、安眠効果があります。緊張、不安、不眠症などに効果的。
(2003年5月号)
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