薬石花房 幸福薬局
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甘いものをたくさん食べて、脂っこい外食をしょっちゅう食べて、夜更かしをして、それで最近なんだか肌の調子が悪いなあ、というかた、いらっしゃいませんか? あるいは体調が悪いんだけど自分に合った薬を処方してもらったから、もう大丈夫・・・、そういうかた、いらっしゃいませんか?

せっかくきれいな肌をしていても、毎日の生活が乱れていると、肌の状態は悪くなります。また、せっかく効きそうな薬を飲んだり治療を続けたりしていても、あまり効果があがらないこともあります。もちろん処方内容の問題や、薬や治療法の限界などもありますが、意外と大切なのが、薬を飲む側の姿勢や環境です。

これは漢方でも西洋医学でも同じです。薬で体調をいい方向にもっていこうとしても、体調を悪い方向に引っ張るような日々の生活を続けていては、体調はなかなかよくなりません。とくに漢方は、からだ全体のバランスをよくして病気やお肌の状態をよくしていこうというもの。日常生活でも体にいいことをいたしましょう。

たとえば西洋医薬は、薬で神経伝達を遮断して痛みを感じなくしたり、ホルモン剤で人工的にホルモンバランスを変更して月経障害に対応したりします。一方、漢方薬は生薬の力を借りて臓腑のバランスを調整したり気血を補ったりして、病気の根本的な改善をします。ですから薬を飲む側にも、生薬の気のパワーが十分に発揮されるような意識や環境を用意することが大事です。漢方薬で病気を早く改善するための環境作りをいたしましょう。

まず忘れてはならないのは、病気を治すのは、そして肌をきれいな状態に戻すのは、自分の体の中にある治癒力、生命力だということです。漢方薬でせっせと治癒力を高めても、不規則な生活や暴飲暴食を続けていては、せっかくの漢方の効き目も現れてきません。生命力を高めて、できるだけ元気に快適にきれいに生きていきたいのは自分自身であることを忘れないようにしたいものです。そして、その中でとくに大事なのが、今回のテーマ、いかに食べるかという問題です。

私たちは生まれたとき、3kgくらいの重さしかありませんでした。それが大人になれば体重はおよそ40kg以上。10倍以上に増えています。私たちの体重のほとんどは、毎日の食事の積み重ね、ということになります。いいものを食べていれば肌も髪も爪もきれいです。さらに肌、髪、爪といった目に見える部分だけでなく、内臓や骨、それに内臓機能、集中力、持続力、毎日の元気といった目に見えない部分にも、当然よい影響があります。毎日どのようなものをどのように食べているかということは、とても大事な問題です。 漢方には、食事をとおして食材に含まれる気をいただくという考えがあります。食材が大自然の中で成長するあいだに得た大地のエネルギーや太陽エネルギーを食事としていただくということです。同時に食材の力を引き出すように調理をします。

具体的には、どのようなものを食べるといいのでしょうか。

まず基本的には豆類や野菜、そして玄米などの穀物類です。海藻類もお勧めです。しかも自然のかたちに近く、あまり精製・加工されていないもののほうが望ましい。たとえば大豆や玄米は、そのまま土にまいて水をやると、芽や根が出てきます。生命力がそのまま凝縮されているといえます。それをそのまま大切にいただくことが基本となります。このような食品をアルカリ性食品という場合もあります。アルカリ性食品には、血流を整える働きもあります。

では逆にあまり食べないほうがいいのはどのようなものでしょうか。たとえば肉類。もちろん動物性のたんぱく質が必要な場合もありますが、過剰な肉食は体内での気や血の流れを阻害します。牛乳もそうです。高たんぱく高エネルギー食は、胃腸への負担が大きく、臓腑機能を低下させます。余分なものが体内に蓄積されます。気や血の流れが悪くなります。疲れやすく、頭の回転も鈍くなります。
当然、肌も汚くなります。肉食の害を軽減させるためには、食物繊維をたくさんとりましょう。
輸入食品、加工食品、冷凍食品も、とりすぎないほうがいいでしょう。一般に、ある土地にはその土地に適したものが育ちます。寒い地域の作物は体を温めるものが多く、逆に暑い地方の農作物には体を冷やすものが多々あります。熱帯付近でとれるバナナやコーヒーには、体を冷やす力が秘められています。ですから輸入食品や加工食品には、私たちの体が欲しがらないものが多く、体によくないことがよくあるのです。 砂糖のとりすぎにも注意してください。まず砂糖の原料サトウキビは暖かい地方で育つもの、つまり体を冷やす働きの強いものです。私たちが取りすぎると体が冷えてしまいます。冷え症の人はとくに気をつけるといいでしょう。

さらに白砂糖はあまりに精製されすぎていて、私たちの体が対応できる速度を無視して急速に吸収され、血糖値を上げてしまいます。この結果、内分泌ホルモン系や代謝系に失調が生じ、さまざまな体調の不良をまねきます。しかもその多くは脂肪として蓄えられます。疲れの原因にもなります。白血球の働きも鈍ります。皮膚炎を悪化させ、かゆみを増強します。甘さたっぷりの清涼飲料の問題については本連載の3回目にも書きました。参考にしてください。

農薬や着色料、防腐剤、人口甘味料などの食品添加物にもある程度注意を払ったほうがいいでしょう。これらは、長く体内にとどまって気を消耗させ、体を疲れさせます。とくに五臓六腑の腎に悪影響があると考えられています。そういう意味ではインスタント食品もお勧めできません。食品添加物が多く含まれていますし、第一、食材の気をいただくという食事の基本からは、遠くかけ離れた存在といえます。

そんなこと言っていると、食べるものがないじゃない、という気もしてきます。そのあたりは、程度問題です。安いから、早いからとファーストフードばかり食べていた人がそれを減らし、そのぶん少し自分で料理をするようにしただけで、にきびが減ったりするものです。

食生活の改善だけでは、なかなか効果が上がらない場合や、早く体質改善してきれいになりたい場合は、漢方の力を借りましょう。たとえば食生活が悪いために生じた湿疹や肌荒れには、金銀花や連翹、地膚子などで不要なものを捨てる(漢方道の必殺技(2))体質を作るといいでしょう。弱った胃腸の機能そのものを元気に立て直したい場合は、漢方の必殺技(1)「補う」や(4)「バランスを整える」ための生薬、人参、党参、白朮、甘草などが有効です。体重が増えて体が重い人は、漢方道の必殺技(3)「サラサラ流す」や(2)「捨てる」を 活用して老廃物を体内にとどめない体質を作りましょう。生薬は、蒼朮、半夏、枳実、枳殻、青皮などを活用します。

私たちの腸は、食べたものを私たちの命に変換する重要な場所です。高カロリー高たんぱくの食べものは、その腸の機能を狂わせがちです。できるだけ、腸に負担がかからないけれども生命力に満ちた食材を、適量とるようにしましょう。腸には、私たちが勝手気ままに食べた食材を懸命に私たちの命に変換する機能があるのです。腸も頭を使っている、くらいに思っておくといいでしょう。

よくかんで食べることも大切です。胃腸への負担が軽減されますので、腸がしっかり頭を使ってくれます。あごを動かすこと自体が、脳の活性化や免疫力の向上にもつながります。

過剰に水分をとりすぎないことも重要です。水分のとりすぎは胃腸への負担になり、また余分な水分が体内にたまって体調不良の引き金にもなります。体内の各種機能の低下にもつながり、冷えの原因にもなります。水分は適量をとるように。

以上、漢方の視点で大事にしたいのは、食材の気をありがたくいただくこと、そして食べたものが体内に入る大事な場所である腸に負担がかからないように食べること、という二点です。

最後に栄養学と薬膳の違いについてふれておきましょう。

食べものには、漢方生薬と同じように、体を冷やしたり温めたりと、人体に及ぼす影響があります。これらの特徴を食生活に生かして病気の予防や改善に役立てようというのが薬膳です。漢方生薬を食材に用いなくてはならないというものではありません。たとえば冷え症の人は、冷たいフレッシュサラダよりも温かい根菜の煮物のようなかたちで野菜をとる、それだけでも立派な薬膳の考え方です。

一方、栄養学は、一般に必要とされる栄養食を、たんぱく質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルなどに分類し、一日の必要量やカロリーを導き出したものです。この結果、一日に必要なたんぱく質は何グラムだから、これとこれをこれだけ食べましょう、というかたちになっています。もちろんこれもひとつの考え方だと思いますが、人体の精緻な仕組みに思いをはせず、むしろ自動車にガソリンを補給するような考えに思えます。挙句の果てにビタミンやミネラルをサプリメントで摂取すればそれで私は健康、というような極端 な解釈が生まれてくるのではないでしょうか。

食事は楽しくおいしく、季節のものを中心に感謝の気持ちでよくかんでいただきましょう。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『人参サラダ 』

材料(2人分):
人参 1/2〜2/3本 (千切り)
セロリ 5cm (千切り)
クレソン 1/2束 (3〜5センチに切る)
クルミ 1〜2個(砕く)

ドレッシング:
エシャロット 1/2個(みじん切り)
タマネギ 1/8個(すりおろす)
オリーブオイル 大さじ2
へーゼルナッツオイル(あれば)小さじ1/2
ワインビネガー 大さじ2
クミン、キャラウェイ 少々

作り方:
1. ドレッシングの材料をボールによく混ぜる。
2. 人参、セロリ、クレソン、クルミを混ぜて、(1)で和える。
3. 冷蔵庫でしばらく馴染ませる。

●多めの食物繊維で腸の機能をリフレッシュ。
 クルミは漢方で胡桃仁といい、腸内を潤す働きもあります。
 このところスッキリ排便していないかたにお勧めです。腸を大切に。

(2003年4月号)


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