薬石花房 幸福薬局
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花粉症で鼻をかんでばかりいると、鼻のまわりのお肌は荒れるし、お化粧は落ちるし、それに目もかゆくて充血するし、せっかくのまつ毛も、あ〜あ、だいなし。お化粧どころではない人も多いのではないでしょうか。かといって鼻炎用の薬を飲むと、集中力が低下してぼうっとするし、口の中がやたら渇いてしまうし・・・・・・。できれば生活習慣や環境の改善と漢方の力でアレルギー体質そのものから見直してみるのもいかがでしょうか。

花粉症は、いまや日本に2000万人の患者がいるという、わが国を代表するアレルギーの病気です。私も以前は花粉症でした。

毎年2月から4月にかけてはスギ花粉が猛威をふるい、そのあとはヒノキ、カモガヤやオオアワガエリ、秋にはブタクサやヨモギなどの花粉も飛散しています。北海道ではスギ花粉は少ないのですが、シラカンバの花粉が花粉症を引き起こすようです。

28歳の女性の例です。4年前から急に花粉症になりました。仕事中でも水のような鼻水が流れ出ます。会議中にくしゃみが続けて出たりもします。鼻水はいつも突然出始めるので、気が気ではありません。頭が重く、集中力に欠け、憂うつな日々が続きます。
ティッシュペーパーが手ばなせず、鼻のまわりは真っ赤です。大事な会議の前などは市販の鼻炎薬で症状を抑えますが、眠気がするし頭がぼうっとするし、鼻の奥やのどが乾いて不快です。

漢方では、花粉症の症状は、体内にある余分な水分が花粉の刺激によってあふれ出し、鼻水、くしゃみ、涙、鼻粘膜のむくみとして現れてきているととらえます。漢方で見立てる体質のひとつに、体内に冷たい水分が過剰に存在する体質というのがありますが、そういう体質の人は花粉症になりやすいのです。花粉症に悩む人は、そういう体質を漢方薬で改善していけばよろしい。

たとえば胸のあたりに浴槽があるとイメージしてください。浴槽になみなみと張られた水が、余分な水分です。もし水を入れすぎると、あるいは浴槽のサイズが小さいと、水が浴槽からあふれ出し、鼻水やくしゃみとなります。

水の量が浴槽に比べて少ないときには多少その水の量が増えても鼻水が出る結果にはなりませんが、水面が浴槽のふちを越えると突然、鼻水が出ます。ある年から急に花粉症になる人が多いのは、このためです。

花粉症になりやすいのは、この体内の浴槽に水がたまりやすいか、あるいは浴槽のサイズが小さい人です。具体的には、清涼飲料や 冷たい飲み物が好きな人、くだものが好きな人、お酒ならビール党、甘いもの好き、冷え症、胃腸の弱い人、下痢しやすい人などが、このタイプです。

ということは、日常生活では水分や甘いものをとりすぎないようにし、体を冷やさないように注意すればいいわけですね。冷たい清涼飲料よりは温かいお茶、くだものや生野菜よりは温野菜です。花粉症の症状が出ない時期にも気をゆるめずに、たとえば夏でも鼻水が出ないからと安心しないで水分やビールをがぶがぶ飲むのは少し控えたほうがいいでしょう。

近年の花粉症患者の急激な増加に対し、スギ花粉が悪者のように扱われますが、スギ花粉は太古からこの時期に飛散していたわけですし、問題はむしろ私たち人間の体質の変化にもあると漢方では考えます。戦後の植林の影響でスギ花粉の飛散量が増加しているようですが、スギの植林地から都会に出てきて初めて花粉症になる人も多くいます。スギ花粉は、いわば引き金ということになりますね。

さて前述の女性の場合ですが、まず彼女には漢方道の必殺技A「捨てる」を用いて体内の余分な水分を排泄します。半夏や路路通などの漢方生薬が適しています。そこに体を温めて浴槽を大きくするための乾姜や白芍などの生薬を一緒に煎じて服用してもらいました。ついでに私の場合は、手足が冷えやすく、また胃腸も弱いほうでしたので、茯苓や炮附子などの生薬を服用して、半年ほどで体質改善できました。それ以降は花粉症のために漢方薬を飲むことがなくなりました。

私のところでの花粉症に対する漢方薬の有効性をまとめた論文が2002年に北京で開かれた国際学会「世界養生大会」で認められ、発表する機会がありました。「花粉症に対する健脾利湿法の有効性」という論文です。内容は、体内に余分な水分がたまっているタイプの花粉症に対し、余剰水分の排泄と胃腸機能の改善のための漢方薬を服用し、同時に上記のような養生を行った結果、満足のいく効果を得たというものです。漢方薬の服用と並行して、水分や甘いもののとりすぎに注意することは、かなり有効ですよ。

最後に常識的なことですが、日常生活においては先の水分や冷たいものをとりすぎないこと以外に、体質が改善されるまでは、花粉症の引き金となる花粉との接触を避けることも必要でしょう。花粉情報に注意して窓を閉めたり、外出時はマスクや眼鏡で花粉の侵入を防いだり、帰宅後はうがいや洗顔をしたり、洗濯物を屋外に干したときは十分はたいてから室内に取り入れたりと、自分を守るための細かい配慮を心がけてください。

なおここでは水分が体内に溜まりやすいタイプの花粉症を中心にお話ししましたが、花粉症にはこれ以外にもさまざまなタイプがあります。漢方で花粉症の根本的な改善をしようという人は、必ず漢方の専門家のカウンセリングを受けて、自分がどういうタイプかをみてもらってから漢方薬を選んでください。

花粉症に対する現代医学の見方もみておきましょう。アレルギー反応が起こる局所的なメカニズムとして、花粉が鼻粘膜に付着したあと花粉のたんぱく質が粘液に溶けて鼻粘膜内に入ります。そこで鼻粘膜内にあるマスト細胞の細胞膜についているIgE抗体と反応し、その結果マスト細胞内に蓄えられていたヒスタミンが遊離されてアレルギー症状が誘発されることがわかっています。そのヒスタミンが鼻粘膜の粘液腺を刺激するので鼻水が出ます。また毛細血管を広げるために血管から水分が漏れ出て鼻粘膜が腫れて鼻がつまります。そして神経を刺激するのでかゆみが生じます。

西洋医学では、この局所反応を抑制することにより、アレルギー症状の緩和を図ります。代表的な処方は抗ヒスタミン剤です。ヒスタミンの遊離が抑えられるので症状が緩和されます。花粉が飛び始める数週間前から服用すると症状をよく抑えられるようです。またクロモリン(インタール)の点眼液や点鼻液も、症状を抑えるためによく用いられます。炎症を強力に抑える作用のあるステロイド剤も使われます。

これらは、いずれも症状を抑える薬です。ですから皆さん経験されているとおり、薬を飲み忘れると必ず症状が再発します。また抗ヒスタミン剤には眠気、口の渇き、疲労感や体のだるさなどの副作用があります。また飲み続けると、だんだん効かなくなる傾向があります。ステロイド剤も、抗炎症作用が強いぶん副作用も大きいので注意してください。

減感作療法という治療法もあります。スギならスギ花粉エキスを薄めて注射して体内の抗体を増やしていくという原理です。はじめは毎週2から3回病院に通って注射を受け、これを約3年間続けます。この療法も、人工的に抗体を作っているわけですから、治療をやめると徐々にアレルギーが現れるようになります。また強い副作用の可能性や、注射液の濃度の微妙な調整の必要性がありますので、これを行う場合は十分信頼できる病院で行うようにしてください。

西洋医学にも漢方にも、長所と短所があります。そのあたりを、薬を飲む本人がよく理解して使ってほしいと思います。世の中には、100パーセントの確率で病気を治す夢のような薬や治療法は存在しません。

なお、よく漢方薬として小青竜湯という処方が出されるようですが、この薬は体質改善ではなく、むしろ症状を抑える薬です。患者のアレルギー体質を改善したいと考える場合、この薬を処方することはほとんどありません。ご参考までに、患者の症状や生活習慣などに対する問診をしないで小青竜湯エキス顆粒ばかり処方する医療機関もあるようです。しかしご存じのように漢方薬はひとりひとりの体質や病状によって処方が違ってきますので、このような医療機関から漢方薬を処方された場合には注意したほうがいいかもしれません。

漢方薬の場合、必ずしも飲み始めてすぐ、あっという間にアレルギー体質が改善されるというわけでもありませんので、花粉症改善の対策は、ある程度長い目でお願いします。現代社会では、漢方薬でアレルギー体質を改善し、症状がひどいときには抗ヒスタミン剤などで症状を抑えるという方法が、現実的な方法のひとつかもしれません。

あなたに合った漢方薬ですと、飲み続けるうちに体質が改善されて症状が緩和され、翌年には今年とは比べものにならないほど快適な春先を迎えることも夢ではありません。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『紅花飯 』

材料(2人分):
紅花 小さじ2(酒 大さじ2につけておく)
苡仁(ハトムギ) 大さじ1
枸杞子(クコの実) 大さじ1
米 1カップ(といで水をきっておく)
もち米 0.5カップ(といで水をきっておく)
鶏胸肉 80グラム(1センチ角)
干しシイタケ 1枚(水で戻し、1センチ角に切り、戻し汁もとっておく)
ゆでたけのこ 30グラム(1センチ角)
ねぎ 1/4本(粗みじん)
しょうゆ 大さじ1
みりん 大さじ1/2
塩 少々

作り方:
1. 苡仁をよく洗い、水に浸したあと柔らかくなるまでゆでておく。
2. 厚手でふたがきっちりできる鍋にサラダ油(分量外)を熱し、干しシイタケ、ねぎ、鶏胸肉、
 たけのこの順に炒めていく。肉の色が変わったら、米ともち米を加えてさらに炒める。
3. 米が熱くなったら、紅花(酒ごと)、シイタケの戻し汁(シイタケも)、しょうゆ、みりん、
 塩を入れ、水を入れる。水の量は、水分が全体で2カップになるように調節する。
4. 苡仁、枸杞子を入れ、木べらで混ぜながら中火で沸騰させる。
5 沸騰したらふたをして弱火で10分間炊く。
6. 火を止めたら10分間蒸らしたあと、大きく混ぜる。

●紅花は血行をよくして体を温める漢方生薬。今回のレシピは手足の指先まで温めてくれますよ。

(2003年2月号)


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