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爪のおしゃれは昔から女性の楽しみのひとつでしょうか。お出かけ前に爪の形を整え、マニキュアを塗ってしばし眺める。最近では街角にネイルサロンも増え、夕方のアフターファイブは大盛況。爪のおしゃれへの関心は高いようです。

人と会って食事をしたり、仕事の挨拶で名刺を交換したりと、爪が人前で注目される機会は毎日のように訪れてきます。そのとき爪が不潔に伸びていたり、汚れていたりすると印象がよくありませんね。

『葉隠』という書物があります。武士道つまり武士の道徳・倫理について書かれたものです。三島由紀夫が心酔したことでも知られています。ここには武士の日常の身だしなみに関することまで細かく示されており、そのひとつに「侍は、毎朝、手足の爪を切って軽石にて摺り・・・」と出ています。武士として精悍な容姿を保つためだけでなく、いつ死んでも恥を残さないように、という心がけと覚悟の現れでしょうね。

さて私たちは、マニキュアを塗らない状態でも美しく桜色をした光沢のある爪、そしてすぐに割れたり二枚にはがれたりしない丈夫で健康な爪を得るための漢方的方法について考えましょう。

爪は皮膚が変形して硬くなったものです。ふつうの皮膚は2週間もすると、あかとなって、はがれ落ちますが、爪は硬いかたまり として伸び続けます。

爪はたんぱく質でできています。爪を丈夫にしようと思ってカルシウムをとる人がいますが、そうではありません。バランスのよい食事と健全な内臓機能が、丈夫な爪の基本です。

爪は爪の根元で作られ、古いものが押し出されて指先に向かって伸びていきます。爪は一日に0.1ミリほど伸びますので、約100日で爪の先に到達します。今度切られる爪は、100日ほど前にあなたが作った爪です。

爪の根元で作られた爪は、そのまま押し出されるように移動して先まで運ばれます。そしてその間は、新陳代謝することもなく、新たに栄養分が供給されるわけでもありません。ですから栄養状態がいいときにつくられた爪は最後まで丈夫で、体調が悪いときに作られた爪は切られるときまで薄いままです。重い病気にかかったときには爪に薄くなってへこんだ部分ができ、そこが横筋のようになって残ります。爪の根元に良質のたんぱく質がいかに準備されているかで爪の丈夫さが決まるといえるでしょう。

映画『王様の漢方』で老漢方医が患者の爪を診てその人の過去100日の健康状態を推察する場面がありますが、それは以上のような根拠に基づくものです。そしていったん作られてしまった爪を健康的できれいに保つには、自分でケアすることが肝要となります。

桜色のきれいな爪の色は、爪の下の部分の血行がよい証拠です。血行や内臓の状態が爪の色に現れてくるのです。わたしたちは職業上、さりげなく患者の爪の色や状態をみて、その人の体質や血行状態についての手がかりを得ています。

以上より、美しく丈夫な爪をゲットするために必要なことは、以下の3点です。

 爪の根元にリッチな栄養をスタンバイ
 指先の血行は元気にサラサラと
C あとは自分でせっせとケア


「爪の根元にリッチな栄養をスタンバイ」のためには、まずなんといっても毎日の食事です。偏食はしていませんか。栄養のバランスを考えずに外食やコンビニ弁当の日々を無邪気に送ってはいませんか。心がけてほしいのは、できるだけ多くの種類の食材を食べること、季節の野菜をたくさん摂ること、豆類を心がけて口にすること(豆腐や納豆も豆類ですよ)、そして玄米など自然なかたちに近い穀類を食べることです。逆に口から遠ざけたいのはスナック菓子、清涼飲料、食肉加工品、牛乳、白砂糖などです。

さらに漢方の必殺技@で「補う」体質を作り上げれば文句なしです。いい内容の食生活を送っていても「補う」体質ができていないとリッチな栄養分は体を素通りしてしまいます。逆に「補う」体質の人は、口にした良質の栄養がしっかりと体内に吸収され、結果的に丈夫な爪が作られます。もちろんこの「補う」体質は、爪だけでなく、しっとりとつやのある肌、豊富で張りのある髪、そして安定した生理やしっかりした集中力の基礎ともなります。

28歳の女性で、生理が安定しないで遅れ気味なかたがいました。目が疲れやすく頭がぼうっとしがちで、肌つやもよくありません。爪ももろく、すぐ二枚に割れる、とのことです。

このかたは「補う」体質のできていない典型的なタイプ。「補う」体質作りのための漢方生薬を服用してもらいました。何首烏、当帰、阿膠、竜眼肉、旱蓮草などが具体的な生薬です。4ヶ月ほど経ちますが、生理不順は完全に改善し、その他の諸症状も緩和されてきています。


「指先の血行は元気にサラサラと」のためには、漢方の必殺技B「サラサラ流す」作用のある生薬を用います。血液がどろどろして血行が悪い場合は紫色や黒っぽい爪の色をしています。栄養や元気が不足して血行がよくない場合は爪は白っぽくなります。また内臓機能が落ちると蒼白っぽく、冷え症がひどい場合は青味がかった爪の色になります。

冷え症でトイレが近いのが悩みの24歳の女性の例です。かなりの冷え症で、しかも寒がり、声も小さく元気のない感じでした。爪を診れば、白い色でした。

このかたの場合は「サラサラ流す」ための川などの生薬に、党参、白朮、鹿茸などを加えて元気を補い血液循環を強力に改善させました。その結果、かなり顕著に効果が出て、短期間ですっかり元気になりました。もちろん爪の色もきれいなピンク色に変身しました。

三つ目の
「あとは自分でせっせとケア」の方法は、具体的にはアロマオイルで爪の甘皮をマッサージする、リムーバーが一番爪に悪いのでマニキュアを毎日塗り替えない、などでしょうか。ネイルサロンなどで専門家のアドバイスを聞いたりするのもいいでしょう。顧客の爪の健康状態を見ながらネイルケアをしたり、爪のおしゃれをしたりするネイルサロンもありますよ(「ネイルクイック」電話03-5524-7517)。

そうそう、漢方のカウンセリングに行くときは、少なくとも初回は爪にマニキュアをせず、お化粧もしないか、できるだけ薄めにしておいたほうがいいですよ。顔色や爪の色から、わたしたちはたくさんの情報を得ることができますから。


★ 漢方道・四つの必殺技 ★

  1. 「補う」
    足りない元気や潤いは、漢方薬で補いましょう。
  2. 「捨てる」
    体にたまった余分なものは、漢方薬で捨てましょう。
  3. 「サラサラ流す」
    漢方の力で血液や気をサラサラ流し、キレイな体内を維持しましょう。
  4. 「バランスを整える」
    内臓機能のバランス・心身のバランス・ホルモンのバランス・・・漢方の得意技はバランスの調整にあり。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『ナスと豚肉のウイキョウ入り玄米炒めご飯 』

材料(2人分):
玄米(炊いたもの) 3カップ
豚ロース肉切り身(1センチ厚さ) 1枚(80g)
ナス 3本
にんにく 1かけ
ウイキョウ(フェンネル) 小さじ2
鷹の爪 1本
オリーブオイル 適量

作り方:
1.にんにくはみじん切り、ナスは7ミリ角に切る。
2. 豚肉は7ミリ角に切り、塩こしょうをまぶしておく。
3. フライパンに多めのオリーブ油をあたため、にんにく、ウイキョウ、鷹の爪を炒め、
 香りがたったらナスを加え、塩をふりながらしんなりするまで炒める。
4. 豚肉を加え、肉に火が通るまで炒める。
5 玄米ご飯を加えて炒めあわせ、塩こしょうで味を調える。

●玄米は元気な体を作る基本中の基本。ウイキョウは生薬名を小茴香といい、胃を整えたり冷え症をやわらげたりします。豚肉の代 わりに羊肉を使ってもおいしいですよ。

(2003年1月号)


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