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夏です。みなさん、爽やかな汗をかきましょう!・・・とはいうものの、必要以上にだらだら流れ出る汗は、不快なものです。スーツの中は汗びっしょり、シャツはべとべと、おまけに汗のにおいや体臭まで気になります。それに、夏に限らず、とくに緊張したときなどに手のひらや足の裏、わきの下などから、じわりと出てくる汗も悩みの種です。人知れず悩んでいる人もいるのでは?実は汗の悩みで漢方薬局に来る人は、四季を通じて大勢います。友達にも話しにくいし、病気じゃないから病院にも行けないし・・・というわけで今回は、こんな汗の話からです。

まずは正常な汗の話。汗は皮膚の汗腺から出ていますが、汗がなぜ必要かご存知ですか?実は、汗は余分な熱を体から放散させるために出ているのです。たとえば真夏の直射日光のもとで汗が出ないと、体温はすぐ40度を超え、生命の危険が生じます。正常な発汗は、われわれが健康であることのあかし証です。このことは忘れないでください。

さて問題は、必要以上に流れ出る、不快な汗です。不快な汗の原因は、漢方の見地から見ると、おもに三つあります。一つ目は、「気」が不足したために汗が出るタイプ。「気」はからだに必要な元気や水分が体表から漏れ出すのを防ぎます。あとでお話しする夏バテとも関係していますが、体表を守る役目をする「気(≒エネルギー)」が不足すると、体内に保存しておくべき水分が体表から漏れ出して必要以上の汗となります。二つ目は、体内の熱と水分のバランスが崩れたタイプ。健康な人体内では熱と水分が均衡しているために内臓の諸機能の活動が活発ですが、そのバランスが崩れると熱が体内にこもり、汗がじわりと出ます。からだがほてったり、のぼせたりする人は、このタイプが多いでしょう。三つ目は、体内に余分な水分が溜まっているタイプ。先の熱がこもるタイプと違って、どちらかというと肌が冷たく、むくみを伴ったり、いわゆる水太りと思われたりするタイプです。

では、それぞれのタイプを、漢方ではどうやって改善するかですが、美容のための漢方道・四つの必殺技(@補う・A捨てる・Bサラサラ流す・Cバランスを整える)のうちの@・C・Aを使います。一つ目の「気」不足タイプには、黄耆や西洋参などの生薬を使って気を補い、体表を引き締め、余分な汗の流出を防ぎます。技@「補う」ですね。二つ目の熱・水分アンバランスタイプには、生地黄や当帰などの生薬を使ってバランスを整え、爽やかな素肌を維持します。技C「バランスを整える」です。三つ目の水分貯留タイプには、黄耆やヨクイニンなどの生薬で水をさばきます。技A「捨てる」です。

服用方法は、すべて煎じて飲む方法です。体質に合わせて複数の生薬を組み合わせて飲むといいでしょう。

私たちの元気は水分とともに体内を巡る、と漢方では考えます。必要な量の水分が体内をスムーズに流れるとき、私たちの元気もからだ全体にいきわたります。その結果、頭がさえわたり、気持ちも前向きで体調もよく、肌つやや顔の表情も美しく、動きも快活になります。しかし水分が必要以上にからだから奪われると、元気もからだから失われます。これが夏バテです。

夏バテも一時的な軽い症状なら適度に水分を補給し、消化のよいものを食べれば症状は軽減しますが、症状がひどいときや積もり積もった夏の疲れは、そう簡単にはいきません。そういう場合は生薬を用いて体内を潤し、元気を補います。漢方道の必殺技?「補う」ですね。具体的には麦門冬・五味子・西洋参・人参・党参・黄耆・生地黄・玄参などの生薬を用います。生脈散という素晴らしい方剤がありますので、各人の症状に合わせて生脈散を基本にした処方を服用し、からだにこびりついた夏バテをそぎ取ってください。

夏バテに限らず疲労倦怠感一般にいえることですが、疲れたときにビタミン剤に頼っても効果は一時的です。薬がきれればまた疲れがぶり返すことは皆さん経験済みでしょう。ここで夏バテと多汗からからだを守る日常の注意点についてまとめておきましょう。
まず水分の摂り方に注意。夏の暑い時期に冷たい飲み物をがぶがぶ飲むと、胃腸の働きを弱め、ますます体力が衰えます。口やのどが渇いても、冷たいものの飲みすぎに注意し、できるだけ温かいものでのどを潤すようにしましょう。

水分の補給に市販の清涼飲料やスポーツドリンクを多飲する人がいますが、これも意外とくせもの曲者。容器の表示を見てください。500mlのペットボトルに糖類が33.5グラム入っているものもあります。そんな大量の糖類を一度に摂取して、からだにいいはずありません。

そういう点では、スイカなどは優れた食べ物です。水分を補い、余分な熱をからだから取り去ります。トマトやきゅうりなどの夏野菜もいいでしょう。のどが渇いてもスポーツドリンクなどに頼らず、夏の野菜や果物、あるいは水やお茶で水分補給してください。夏の中国では、スイカを搾ったスイカジュースが街角や列車の中で売られていますよ。

そして十分な睡眠です。とくに夏は何をしなくても体力の消耗が激しいので、無理をせず、睡眠時間を十分とり、起床時間を中心に規則正しい生活パターンを維持してください。

夏と冬に相談に訪れる患者数が増える「冷え症。」そして夏の冷え症に悩む女性が口をそろえておっしゃるには、「職場のクーラーが効きすぎて・・・。」

冷え症の体質には、おもに二種類の原因があります。その原因を取り除くことができれば、体の内側から冷えを排除できます。膝掛けなどに頼るばかりでなく、以下の文を読んで、体の内側からの冷え症対策を試してみてください。

まず一つ目の原因は、胃腸にあります。詳しい話の前に私たちのからだが体温を保つ仕組みをみておきましょう。最初に食べ物を食べます。そして食べた物が消化・吸収され、栄養分が体内に入ります。そして栄養分が体内で必要に応じて代謝され、熱を産生してこれが体温となります。体温は血流に乗り、からだ全体に運ばれます。

食事の内容や消化・吸収能力に問題があると、熱の産生が不十分となり、体が冷えます。たとえば冷たい物の食べすぎは、胃腸の働きを阻害します。脂っこいものの摂りすぎも、消化機能に負担をかけるので良くありません。

冷え症の人は、この逆のことをすればよいのです。つまり消化のよいものを食べて冷たいものの飲食を控え、胃腸をいたわってください。玄米などの雑穀類や大豆などの豆類、根菜やカボチャなど重い野菜類、そして海草類などを中心に摂るようにしてください。よくかんで食べることもお忘れなく。

そして二つ目の原因は、血行にあります。血液循環が悪いために体温がからだの隅々にまで運搬されないのです。このタイプの冷え症の人は、特に手足の先がよく冷えます。末端冷え症です。手足が冷えると、手足までやってきた血液がさらに冷え、それがお腹のほうに戻って内臓を冷やします。内臓が冷えると消化・吸収能力が落ち、熱産生効率が下がり、さらに冷える、という悪循環を繰り返します。このタイプの場合は、食事に留意して熱の産生をうながすほかに、マッサージや入浴で血行を良くするのも効果的です。

その他、日常で注意したいのは、呼吸です。ガスや木が燃えて熱を出すときと同様、体内で熱を産生するのにも酸素が必要です。ところが姿勢が悪かったり、忙しくて精神的に余裕がなかったりすると、どうしても呼吸が浅くなり、体内に送り込まれる酸素の量が少なくなります。たとえば朝晩や通勤時間などの時間を利用して意識的にゆっくりとお腹で呼吸をし、十分な酸素を体内に送り込んであげてください。

また、お風呂も大事です。過剰な冷房で冷えたからだのコンディションを正常に戻すため、ぬるめのシャワーで済まさずに温かいお風呂タイムを作ってお腹を温めなおしてください。

最後に食事の改善や腹式呼吸で改善されない頑固な冷え症の人は、漢方薬を飲んで体質を改善するといいでしょう。お腹から冷えるタイプの人は党参や乾姜、血流が悪くて冷えるタイプの人は当帰や桂枝などの生薬が配合された処方を選んでください。実際には両方が混在するタイプが多く、同じ冷え症でもその適応処方は人によってさまざまですので、詳しくは漢方の専門家に相談するのが一番でしょう。

女性の場合、子宮や卵巣を冷やすとたいへんです。生理痛や生理不順、そして不妊症や不正出血にも、冷え症が根本原因となる場合が多くみられます。冷えが原因でホルモンのバランスが崩れることにもなりますので、じゅうぶん注意してください。

からだを冷やさないことは、漢方の鉄則。とくに女性はホルモンバランスや生殖器系の関係上、絶対にからだを冷やしてはいけません。漢方では冷え性ではなく冷え症と書きますが、これは漢方では冷え症を立派な病気とみなしているからです。クーラーの設定温度は高めに。電力会社からだけでなく、わたしからも、お願いします。


● 今月の美肌薬膳はこれだ! ●

『イカと松の実の梅肉あえ 』

材料(2人分):
イカ(刺身用)100g
松の実 大さじ1
梅干 2粒
煮切りみりん 大さじ1
穂紫蘇 適宜

作り方:
1. 梅干は種を取り除き、果肉を包丁でたたいてペースト状にし、煮切りみりんを加えてときのばす。
2. イカは熱湯でゆで、表面にさっと火が通り、中がまだ生の状態のところで冷水にとって余熱をとり、水気をよくふき取る。
3. 2のイカを1cm角くらいのさいの目に切り、松の実と合わせて1であえる。
4. 3を器に盛りつけ、穂紫蘇を飾る。

● 松の実は生薬名を海松子といいます。イカ、松の実ともからだを潤す働きがあります。夏バテ気味のときに、このサッパリ料理で元気を回復してみてはいかが?

(出典:橋口亮・玲子著「橋口先生のおいしい漢方ごはん」平凡社)

(2002年9月号)


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